逃避路
「先生、石灰は食べれるらしいですよ」
というわけで栄養補給にどうぞと濁ったコーヒーを差し出すこいつは一応俺の生徒である。
「っあー残念だなーコーヒーもう自分で淹れたんだよなー」
「先生は女子生徒に優しくが信条ですよね」
「例外って言葉知ってるか」
「生憎得意科目は英語なんで私日本語苦手なんです」
「流暢にしゃべってるその言語はなんだ」
「じゃぱにーず」
へいへいよくできましたと呆れながら適当にあしらう。
「先生、」
「なぁに?」
「T love you」
くそ、こんな時だけ完璧に発音しやがって。
「生憎先生日本人だから英語分からないんだわ」
そう言って英語教師のくせにと返されるのがいつもの、俺の逃避路。
でも今日のこいつはじゃあ日本語訳してあげましょうかと笑った。
「は?」
するとこいつは真昼の白い月を指差して、月が綺麗ですねと言った。
どうやら逃避路は完全に断たれたようだ
逃避路逃避路
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某夕日に捧げたアレとつながっているような。
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