透明
半透明に透けている体で彼によりかかり手を日に透かす。
「……学校に行かなくていいのかい?」
「だってこの透明度皆に認識されるんでしょう?」
こんな事で質問攻めに遭ったら透明度が増してしまうと彼女は言った。
「そうだね」
「多分私は誰にも認識してもらいたくないのよ。」
だからその思いをこれ以上強くしたくないの。さすがに世界からは消えたくない。
「ねぇ忍野さん、もし私が見えなくなったら悲しんでくれる?」
多分悲しまないだろうねと彼はしばらく考えて答えた。
「残念」
「いやいや誤解を招くような発言をしたね。だって君は透明になってもまた、いつものようにこうやって僕によりかかっているだろう?」
「……図星」
だって他に行くところがないのだものと言うと彼は違うねとやんわり否定した。
「君は僕以外の所に行きたくないんだ。僕のうぬぼれでもなんでもなくね。」
「……忍野さんは本当に全部お見通しだね」
彼に相変わらずもたれたまま彼女はうぅんと伸びをした。
心なしかさっきより透明度が低くなったようだと彼女はいう。
「そうかい?」
だってほら、と彼の手に自分の手を重ね彼女は言う。
「忍野さんの手がほとんど見えなくなってるじゃない?」
透明透明
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