あともう三センチ
後数センチ、具体的には後三センチ手を伸ばせば彼に届くのだ。
「…………はぁ」
何故彼が私の隣でにこにこしているのか分からない。
「どうしたんですか?」
「いえ、特になにも」
確か私がここの、公園のベンチに座っていたら彼が寄ってきて、
ここで人を待ってもいいかと訊かれて、私が構わないと答えたら彼は私の隣に座った。
「というか、キースさん」
「なんだい?」
「人と待ち合わせしているのなら、私が居ないほうがいいのでは?」
「あぁいやいいんだ、来るかどうかも分からないのだから。」
「はぁ」
彼とは少し前に知り合った。某壊し屋と彼が一緒に居たところに、私が某壊し屋に用があって、そこに行ったら、彼が随分と目をきらきらさせながら一方的に懐いたのだ。
あなた方が居るから、私達は戦えるのだ。ありがとうそしてありがとう。
そう笑った彼をうまくあしらう術を私は知らない。
……というか、近くないか、距離。何故そんな近くに座る。
「来るかどうかわからないって、どういう意味です?」
「あぁ、最初に会ってから、しばらく毎日はその人に会えたんだ、でもある日ぷっつり姿を見なくなって……」
それは告白しないうちに振られたのではという疑問は飲み込む。
「素敵な女性なんでしょうね」
…………
「いやそんな何故分かった、みたいな顔をされても、文脈からとしか。」
そうか、すごいなあなたは!まるで彼女のようだ!と、待ち焦がれている人物の話を彼は始めた。
あともう三センチあともう三センチ
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空月15話ねた
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