偲ぶ
迎え火なんて文化がこの国にはあるが、果たしてそれを行っても彼は帰って来ないだろう。
「そもそも彼は仏門じゃありませんしねぇ……」
そう呟く自分はそういったものと対極に居るのだが。
もう彼が死んで数ヶ月経ってしまった。正直彼が居ないという実感はまだ湧かない。
天にちゃんと召されたんですかねあの男は。
私と関係を持ったせいで、今頃私の故郷にいるかもしれない。そう思うと少しだけ愉快である。
「それなら私も喜んで帰省するというのに」
世間はお盆休み。日本支部では祓魔師達も交代で休みを取って学園から離れている。
「しかし、私に休みはないですかねぇ。」
溜まった書類の山を見てため息をつく。
故人を偲ぶくらいの暇は、欲しいものです。
柄にも無い事を思っているのは重々承知の上なのだから。
偲ぶ偲ぶ
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お盆ですから、ほら
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