ハッピーエンド
そうして、二人は永遠に、幸せに暮らしましたとさ、
「そんなハッピーエンドのおとぎばなしだなんて、一体誰が信じるというのです」
「信じる奴くらい居るだろ」
例えば?と私が問うと彼はまず息子二人の名を上げた。
「子供じゃないですか」
「子供の信じる心は偉大だぜー?」
「はいはい」
私が適当に彼をあしらうと彼はいつものように、軽い口調で言った。
「ハッピーエンドを欲しがっているのはお前だろ?」
「戯言ですね」
でもそうだ、私は、
「ハッピーエンドは、信じてませんけど、嫌いじゃないですよ」
「いいんじゃねぇか、それで」
それが普通だろ、と彼は言う。
「どうでしょうね」
私がハッピーエンドを信じない理由は、私の欲しいハッピーエンドが来るのはありえない事を知っているから。
「ごめんな、メフィスト」
「何のことです?」
「なんでもねぇよ」
彼は、私の事なら何でもお見通しらしい。
そのことは私にとって、とんでもない喜劇だ。
ハッピーエンドハッピーエンド
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