夜明け
朝が来ると、彼は行ってしまう。夜明けと言ってもいい時間に。
「今日も一緒に帰っていいかい」
「……どうぞお好きに」
「なら、今日と同じ時間に迎えに行く!」
私が笑いかけると彼は笑顔未満といった感じに、顔を少し緩めた。
「何故私にそこまでしてくれるのです?」
「それはあなたがとても好きだからだ。」
私がそう正直に言うと、彼は驚いたようだった。正直に言っただけなのに。
「本当にあなたは正直者ですね」
「ああ、よく言われるんだよく」
「褒めてませんよ」
「?」
彼は呆れた顔をする。
「……ではまた夜に。」
「あぁ!もちろんだ!」
彼を玄関先まで送る。
彼は空を見上げて、今日もよく晴れそうですねと言った。
「えぇ、晴天そして晴天!」
空は白々と明け始めて、月はもうすぐ沈もうとしていた。
夜明け夜明け
------------------------
誰か空月ください
[目次]