鏡
鏡をちゃんと見るようになったのはつい最近である。
それまでは最低限身だしなみを整えるとか、その程度。
「それじゃぁ、行ってきます」
誰に言うともなく寮から出る。時間は早朝だ。
いつものように木刀と練習用のエアガンを持って塾の中庭へ行く。
私は頭がよくないから詠唱騎士にはなれないし、手騎士の才能は無かった。
自分の適性はどうやら実戦傾向にあるらしい。
素振りとつるした的を撃ちぬく練習。
エアガンの方は人がいると特にできない。危ない。
いつもの練習をこなしていると、向こうから人が来た。
「あ、おはようございますネイガウス先生!」
「あぁ、おはよう」
彼である。よりによって、と心の中で舌打ち。
彼だけにはこんな汗だくの運動後は見られたくなかった!
せめてちゃんと鏡を見てある程度身なりを整えた後彼に会いたかった。
「熱心だな」
「いえ別にそんな事は……」
私が言いよどんだのを謙遜と受け取ったらしい。まぁそれもあるが。
「くれぐれも無理はするなよ」
そう彼は言い残して去っていった。口元にかすかな笑みを浮かべて。
「…………」
今この瞬間に鏡が無くてよかった。赤くなった自分の顔を見ずにすんだ。
鏡鏡
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番外編とはいえあまり本編と変わりなく
むしろ夢主氏の目指すところ等がわかった時点で本編より話が進んでるという。
某生徒会ラノベと同じ事が。
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