浸透
「また今日もいる……」
私がそうわざとらしくため息をつくと平丸は焦ったように手を振る。ちなみに平丸は会社の元同僚。
「いっいや断じて僕が吉田氏から逃げる為にちょうどいいのが君の所だと言う訳じゃないんだよ」
「いきなり会社辞めてすわクビになったのかと思えば週刊連載漫画の締め切りから逃げていたと知ったときはびっくりしましたよ。えぇ。」
しかも私の家の前まで来てかくまってくれと頭下げられた時には自分の正気を疑った。
「というかなんで私の家知ってたんですか通報物ですよね」
「会社やめる前聞いたじゃないか。でも入れてくれたじゃないか。」
「そうでしたっけ?まぁあなたは生物です生物。ラッコですよつまり」
そう言ってやるとがくりと崩れ落ちる。
「自分の書いてる漫画のキャラと一緒にされるなんて……」
「いいじゃないですか別に。」
ラッコ面白いし。
「そもそもなんで私のところに逃げ込むんですか」
「ちょうどいいから」
「次から追い出しますよ」
そういうと不満げな顔で言う。
「だって定期的にこないと君寂しそうな顔をするじゃないか」
「…………そんなことあるわけないじゃないですか」
寂しいなんてのは認めたくはないが確かにしばらく姿が見えないと死んだかと思う。
ああつまりこいつの存在が不本意ながら私の生活に浸透してきているということで。
浸透している浸透
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平丸さんは当然夢主が好きで甘えに来ています。
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