11:43 金木君(出てこない)


▼金木君を食べる夢を見た。けれど私は喰種ではなくただの人間だ。
皿の上に何か肉塊が乗っていて、私にはそれが金木君の肉だと分かる。きっと夢だからだ。


▼金木君は同じ大学の人だ。必修科目で何度か席が近かったから、話すようになった。
やさしいひとだ。月並みな表現だけど。
最近はずっと休んでいる。大丈夫だろうか。
永近君(金木君の親友である)に聞いたら彼も心配そうに顔をしかめた。
「たぶん風邪とかだと思うんだけどさぁ。うつしたら悪いからって、しばらく会ってねえんだよなぁ。あいつも変に頑固なとこがあるから」
「ご飯とか大丈夫なのかなぁ」
私がぽそりと漏らした言葉に、永近君は一拍置いて、そうだよなぁ!と叫んだ。
「多分買い物とかにも行けてねぇだろうし、何か買ってってやるか。玄関とこに引っ掛けときゃいいだろ」
今日授業終わったら買いにいこう、と算段をたて始める永近君に、
私も行きたいと慌てて申し出た。




金木君は、永近君の買っていったハンバーグを食べられただろうか。
「おい」
「はい!?」
ぼけっとすんな、と西尾先輩は私の頭をファイルでこづいた。
「すいません」
同じ学部の(優秀な)先輩である彼に借りた色々を返しにきたら、片付けの手伝いをいつの間にかさせられていた。
外はもう暗い。送ってやるよ、と先輩は言った。
「えっ先輩が優しいとなんか怖い」
すると西尾先輩は盛大に顔を歪めて――悪人面だ――やさしくなきゃ、こうしていろいろ貸してやらねぇだろと言った。
「お前こっち来たばっかだろ。駅までの近道教えてやるよ」
「いいんですか?」
あんまり人通りないんだけどな、裏道だから。まぁオレといるし大丈夫だろ、と先輩は笑った。


(そんな感じでこのあと錦パイセンに食われて死ぬ)


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