16:11 エノジュンちゃんとモブ男没(愛はない)



別に毛ほども美形じゃないし特別聡いというわけでもない。
ごく小者的に怒るから、「でも彼、とっても優しいの」というわけでもない。
そんな平々凡々な男にこの超絶スーパーウルトラ可愛らしくって絶望するほど頭のいい私が好き勝手されるなんて、とんでもなく絶望的じゃない?
なぁんて思っていたのだ。だから別にあんたに尽くしたのはあんたのためじゃなくって、尽くせば尽くすほど自分が見る目のない頭の軽い世間知らずのオンナノコに思えてきて、
まわりの落胆と同情のミックスされた視線がもう最高だったのだ。おっと文章がめちゃくちゃになってしまいました。つまり私の為だったのです。


そんな絶望的にモブキャラクターなその男が今、散らかった彼の部屋で私に頭を下げている。
「結婚してください」
もちろん盾子が高校を卒業してからでいいから。そう付け加えられた台詞。
結婚。けっこん。ケッコン? 「でいいから」ってとんだ上から目線であることだよ、とか。ところでプロポーズもやっぱり平凡なのね。
(この私様がこんな平凡能無し野郎と病めるときも健やかなるときも死が二人を分かつまで互いを愛し尊重しなければならないの!?)
いやいや、そもそも愛していないし尊重してないし。
もし結婚したらどうだろうか。皆で一緒に考えてみましょう。
絶対残念な子扱いされるよね。お姉ちゃんより?ある意味おねえちゃんより。
でもぉ、そのうちそれが当たり前になっちゃってそんな残念な子絶対誰も見向きもしなくなるよね。それってやばくない?そんなの絶望的でもなんでもないよ。

ねぇ、それだったら、それだったらさぁ。


今この男の求婚を断って、なおかつ振っちゃったりしたら彼はとっても絶望するんじゃないかした!
他人の不幸は蜜の味。絶望なんてもっと甘い。
私は、さも「え、そんなつもりで付き合っていたんじゃないのにこの人何言ってるのマジありえない」という表情を作る。
さて、どうやって彼と(もう「彼」じゃないけど)さよならしましょう。
そもそもなんで彼を選んだんだっけ。あぁ、そうだ思い出した。
とっても表情豊かだったからだ。
その顔がどんな風にゆがんでもとっても素敵だろうな、って思ったのだったわ。



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