17:54 不毛な左右田(眼ソニ前提)と、石丸君中学時代妄想とモブ


▼ひどい雨の日だった。奴が濡れ鼠になって俺のラボに入ってきたのは。
俺は傍らにあったスポーツタオルを投げつける。なんせ湿気水気は大敵だ。
奴は失敬、と短く言ってがしがしと無造作に髪を拭いた。
女の癖に、と俺は顔をしかめる。外はもう薄暗い。
雨音がうるさい。雷は鳴らなければいいのに。
「左右田はソニアさんがすきなんだろう」
タオルを俺に返すとき、奴はそう言った。それがどうした、と俺は答える。
別に隠してはいない。
「でもさ、お似合いだよね、あの二人」
誰と誰のことを指しているのかはすぐにわかった。
俺は言い返す。
「お前は、田中が好きなんだろ」
――奴は、俺の手にひたりと触れて、左右田は察しがよいから好きだと言った。
奴の唇はいつも冷たい。ソニアさんもそうなのだろうか。
奴がここに来たということは。俺は考える。
田中とソニアさんの仲がきっとむつまじいということだ。
俺たちはここでこんなことをしていていいのだろうか。しかし何をすれば正解なのか分からない。
俺は工具をそっと床に置いた。慣れ親しんだ機械油の臭いがいっそ奴に移ってしまえばいいと思う。左右田、と冷たい床に背中をつけて奴は言う。
田中君よりは嫌いだけど、自分よりはよっぽど好きだよ、左右田のこと。
奴の頭蓋骨は、腕は、綺麗な形をしている。
ゴム忘れた、と奴は小さく呟いた。




「石丸くんはすごいなぁ!」
僕がそう感心してみせると、彼は顔色ひとつ変えずにそうかね、と呟いた。
彼の手元で、ロケットみたいな万年筆が滑る。
「そうだよ、僕はとてもじゃないけど君に適わない」
君とぼくはちがうんだなぁ、と僕は安いボールペンを投げ出す。
勢い余って机から転がりおちたそれを石丸君は律儀に拾って僕に渡した。
「君も僕くらい努力をすればいいだろう」
まったくそのとおり、だとぼくは思う。でも君は知らないだろう。
君の勉強方法を聞きだして、そして僕はそれ以上に勉強をしたし、他に犠牲も沢山はらった。
それでも君に敵わないんだよ。石丸君。君はこんな僕のことを友人だと思ってくれただろうか。僕以外に話しかけてくれる人などいないものな。でもきっと友人だとは思っていないだろう。それでもいいさ。だって僕は今から君を傷つけてさよならするのだから。
僕は口を開く。口内は乾いていない。
「いやぁ、石丸君はきっと地頭がいいんだよ、やっぱり。そういうのは遺伝なのかなぁ。きっと君のご両親や祖父母も立派な方達だったんだろうね。天才の子は天才なのかなぁ。」
君の両方の拳がかたく握り締められたのを僕は見た。
その手で今すぐ僕の右頬を殴ってくれればいいのに君はそれができないんだろう
僕は君が希望ヶ峰に行くことを知っている。そこには君の大嫌いな天才が沢山いるだろう。
「それじゃ僕は帰るよ」
石丸君、僕は君のことが嫌いなんじゃあないんだ。ただ、努力すれば必ず報われる性分で、周りもみんなそうだと思っている君はきらいだ。
(仮に君が僕を友人だと思っていたとしたら、それはなかったことにしてほしい。君に友達なんていなかったんだ。最初から)



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