16:36 ばいおれんすと映画泥棒


頭の中に鈍い硬質な音が響く。せっかくの一張羅に白く靴跡がついてしまった。
彼女は楽しそうな笑い声を上げて鉄パイプを振り下ろした。

目の前に火花が散ったような錯覚!

(また、割れてしまった)

私は罅割れをなぞる。これで今月何回目でしたっけ。不鮮明になった視界に彼女の顔であろう肌色が映った。
唇の赤も。

「またどうしてこんなことを?」
だって、と赤色が蠢く。
「パトライトさんが言ったのよう。映画泥棒を止めろって」
「ずいぶんと乱暴な手段ですが」
「何をしてもいいと言ったのだもの」
からぁん、と彼女の手から鉄パイプが滑り落ちた。
そして柔らかな感触が押し付けられる。
彼女の優しい声が響いた。
「ねぇ、明日新しいレンズを買いに行きましょう。」
手をつないでくれないといやぁよ。


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