30000打企画 | ナノ


アレンだ
アレンに会えた

アレンがぎゅうぅ、って力いっぱい抱き締めてくれた。「会いたかった」って言ってくれた。
それだけで、幸せだと思えた。




にんぎょのくつ*Chapter 4




「…え、『足』?」
抱き締める力を緩めて、ゆっくりわたしを離したアレンが、今度はわたしの足を指差してこくりと頷いた。
「なまえは、人魚だよね?初めて会った時、尾びれを見せてくれたのを憶えてる。会えたっていう事実だけで頭がいっぱいだったからすっかり忘れてたけど、え、何で人間になってるの?」
頭の上にはてなをたくさん浮かべて首を傾げるアレンに、わたしはくすくすと小さく笑った。アレンは「ちょっと、笑ってないで説明してよ」と眉に皺を寄せた。
「あのねアレン、わたしね……」

わたしはアレンに、今までのことをすべて話した。人魚の世界のことも、ばあさまに薬をもらって人間になったことも。アレンに会いたくて、たまらなかったことも。

「…あのね、なまえ」
「うん?」
「なまえと初めて会った時、『大人になったら会いに来る』って言ったの、覚えてる?」
優しい声でそう尋ねるアレンに、わたしは小さく頷いた。
「本当はね、その約束破って、何度もなまえに会いに行ったんだよ」
「え、」
「意外と我慢弱い子どもだったんですよねー。もう一度会いたくて会いたくて、こっそり保育園を抜け出して岩場に行ったこともあったなぁ」
アレンは懐かしむように微笑んだ。
「『なまえは、僕のことなんか忘れちゃったのかなぁ』って、何度も思ったよ。こんなに会いたいと思ってるのは、僕だけなのかなぁ、って」
でも、こうして、会いに来てくれた。
アレンはそう呟いて、もう一度、わたしをぎゅうって、腕の中に閉じ込めた。
「明日は早く起きなきゃね」
「へ…?」

だって、ぴったり合う靴を探しに行かないと。

アレンは期待を孕んだ声で、嬉しそうに言った。


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