10000打企画 | ナノ

※若干いかがわしい内容を含む…かもしれません。お読みになる際は自己責任でお願いいたします。









うっすらと、瞼が活動を始める。ゆっくり光を採り入れ始めたそれは、柔い眩しさでしばらく閉じたり開いたりを繰り返した。

「…なんだ、まだ5時か…」
視界に入った時計の短針は、ちょうど5を指す。ほんのりと蒼白い光が存在するこの部屋は、朝方らしい静けさを纏いながらも、どこかにひとの体温を感じさせた。


「…盛り過ぎだよ、ばかアレン」
じんわりと重たい腰をさすりながら、隣で安らかに寝息をたてている彼を睨んだ。…昨夜のあれこれのせいで、腰が痛い。ついでに言うと、もうちょっと下のところも地味に痛いんだぞ、女の子は大変なんだぞ、分かってるんですか君は。ぶーぶーと小声で不満をもらしながら、彼の柔肌をつついてみる。その余りに滑らかな柔肌は、一般男性のそれとは思えないほどきれいで、わたしは悔しさと羨ましさで、衝動的にぐに、と摘んでやった。彼は「ん…っ、」と小さく、そして何とも色気のあるくぐもった声をあげて、眉間に皺を寄せた。
「…額に肉って書いてやろうかな」
「お返しに、なまえさんの額にピンク(今日の下着の色)って、毎日日替わりで書いてあげましょうか?」
「…うわぁ、起きたんだ」
まだ少しだけ重たい瞼をこすりながら、アレンはわたしの下着に手をかけた。ぴ、と指で肩ヒモを引っ掛けて持ち上げ、そのままするりと肩から外した。
「僕としては、この前してた黒いやつも好きなんですけどね」
アレンはふふ、と優しく笑って、わたしの頭の横に手を置いた。そのままよいしょと身体を起こして、布団と一緒にわたしの上に覆いかぶさった。
「…でも、ピンクもかわいらしくて好きですよ。そのほうが、めちゃくちゃに汚したくなるから」
楽しそうにそう言って、わたしの背中に手を回し、ぷつ、と器用に金具を外した。
「…そんな爽やかな顔しながら、言ってることとやってることが全く爽やかじゃないよね」
「あはは、だって、なまえさんがまだまだ物足りなさそうでしたから」

ほしいんでしょ?…僕が。

…彼は大変頭のきれるひとではあるが、時として、ひどく自己中心的な勘違いを起こす。
「…誰もそんなこと言ってない」
「へぇ、そうですか…まぁ、こっちのお口はあんまり素直じゃないですもんね」
にっこりと笑い、わたしの唇を指でゆっくりと撫でる。ぞわ、と背中を走る妙な感覚に、肩が震えた。その反応に気を良くしたのか、そのまま手を滑らせて、わたしの顎をくい、と持ち上げたアレン。相変わらず笑顔を崩さないまま、彼は顔を近づける。そして、

「…ほーんと、かわいい」

唇が触れてしまうような距離でそう言って、すぐに強引に塞いだ。こういうときの彼のキスは、顔に似合わず乱暴なのだ。
「…っや、ちょ、アレンっ」
「なーに?」
「んっ…」
「何?ちゃんと言ってよ、そんなかわいい声出してちゃ分からないよ」
「…キスっ、くるし…っ」
「そう、じゃあ、やめましょうか?」
何度もついばんできた唇を離して、まるで試すみたいに、だけどどこかで答えを分かっているみたいに、彼はわたしに問いかける。焦らして、焦らして、追い詰める。
「……性悪変態策士」
わたしはそう悪態をついて、ほんの少しだけ笑ってみせた。すると彼は少し驚いて、だけどまたすぐに余裕のある笑みを浮かべてみせた。
「へぇ、まだ随分と余裕があるみたいですね。……悔しいなぁ、」
アレンは少しだけ悔しそうに、そしてひどく楽しそうに呟いた。そうして細めた眼を、ほんの一瞬だけ光らせて、すぐにわたしの首筋へと顔を沈めた。

「…ぁ、っ」
「あ、今の声、すっごいそそる」
「ぁ、やっ…」
「…かわいいなぁ、なまえさん」
淡々と、だけどわたしの身体をさも自分のものみたいに手際良く扱う彼は、まさに『勝手知ったる』状態だった。






どうして彼と付き合えるのか?
彼のことをよく知る人達は、こぞってわたしにそう投げかける。

たしかに彼の愛し方は、他のひとよりも幾分か癖が強い。付き合う前からそれは承知していたことではあるが、いざ付き合ってみると、想像以上だ。

年下のくせに生意気で、でも外面は良くて、ついでに言うと整った容姿をしていて、紳士をきどっていて、そのくせだまし討ちにはめっぽう強く、言葉遣いは丁寧にみえて実は刺々しい。愛する人を言葉で虐げ、辱めを与えることにひどく快感を覚える。

反面、人一倍正義感が強くて、自分より誰かが傷つくことを何よりも嫌って、守り切れなかった命に必要以上に罪悪感を覚える。
そんな彼だから、隣で彼の背中を撫でてあげられるような存在が必要だと思った。そしてできれば、その役目はわたしであってほしいと願った。


「…今、なに考えてたんですか?」
「んー、なんでわたしはアレンと付き合ったのかを再検討してた」
「…その結論によっては僕も黙っていませんよ」
すっかりわたしの服を剥ぎ取ってしまった彼は、一仕事終えたかのように、わたしの隣でごろりと寝そべる。
「うんとね、やっぱりよく分からないんだよね」
「さらりと喧嘩売ってますよね」
もっと限界まで追いつめてやりましょうか?という物騒な彼の発言を慌てて宥めながら、わたしは弁解した。

「違うよ、…気づいたらもう好きで仕方なかったんだなぁってことなの」

だって、わたしの前では絶対に泣かないでしょう?

「…それが、どう関係あるんですか?」
「わたし、アレンに似て負けず嫌いなの。だから、わたしの前で大見栄張って強がるアレンが嫌で嫌で、絶対このひとの分厚い仮面を剥ぎ取ってやる!って密かに誓ってたんだ」

だけど、それは思った以上に難しくて、わたしのほうが彼に転がされてる気がして、悔しくて、何度も何度も挑んだ。

「そうしてるうちに、ああ、アレンの仮面を分厚くしているのは、自分なのかもしれない、って思ったの」
「どうしてですか?」
「『仮面を剥ぎ取らないと』っていう先入観にとらわれ過ぎて、それがアレン自身の一部だってことに気付けなかったから」

だから、思った。



誰よりも強がるひとだから、誰よりも彼の弱さを愛せるひとになりたい。




「…なまえさんの話は、難しくてよく分からないよ」
「そうかなぁ」
「でも、それくらい僕のことを好きでいてくれてるんだな、っていうのは分かりました」
「…もう二度と、こんな話しないんだからね、恥ずかしい…!」
「何急に恥ずかしがってるんですか、素っ裸のくせに」
「こんなかっこにしたのは誰だと思ってるんですか!」
「僕です。ってああ、だめですって毛布で隠さないでください」




きみと午前5時
(あいをささやくあさ)






*゚
マナさまリク
『アレンさんきゅんきゅんいちゃこら』

…すみません白状します。布団のなかでいちゃいちゃしてる二人が書きたかったんです。色々すみません。
マナさま、遅くなったうえにこんなんで本当に申し訳ないです…!リクエストありがとうございました◎

2011.5.22
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