はろ | ナノ

あぁ、またやってしまった。

「あ、あのー…すみません、大丈夫、ですか…?」
「……」

起きない。どうしよう。やっちゃった。あ、やばい、泣きそう。耐えろ僕。お前が泣いてどうする!引っ込め水分!蒸発しろ塩分!
「…はぁ、もうやだ、こんな体質…」
両手で顔を覆いながら、深い深いため息がもれた。このどうしようもない自分の運命を心底憎んでも、結局のところ「どうしようもない」という結論に至るのだが。
今はとにかく、目の前で倒れているこの人をどうにか助けなければ。
自分の体質云々よりも、せめて『加減』というものを覚えないと、このままでは犯罪者として世間で名が挙がってしまう。
「…と、とりあえず、家に…!」
僕は目の前でぐったりしている彼女を抱き上げ(お姫様抱っこはもう慣れっこだ)、星明かりを手がかりに深夜の路地裏をそぉっと走り抜けた。


布団に寝かせた瞬間、「ぅ…」と小さく声をあげ、気だるそうに顔をあげた彼女。あ、起きる。
「……お、おはよう、ござい、ます…」
ゆっくりと目をあけた彼女を確認し、少し離れた場所から恐る恐る声をかけた。
「…おはよう、ございます」
わ、なんか普通に返ってきた。まだ覚醒していないであろう彼女と、ぱち、と目が合った。
「…えーっと…ここはー…」
「僕の家です」
「あ、そうですか、あなたの……って誰!」
ぽやぽやしていた表情が一気に色を変え、くわっ!という効果音が聞こえそうなほど、大きく目を見開いた彼女。
「えーと、話せば長くなるので省略しますが、とりあえずごめんなさい!」
「省略しないでくださいそこ重要なんです!」
ぺこりと頭を下げて謝罪するも、どうやらそれでは納得がいかないようすの彼女。そりゃあ、そうだよな。…上手く話せるか分からないけど、彼女には、全部話してもいいかもしれない。僕はそう決心を固め、ベッドに座る彼女に向き合って椅子に座った。そして何かの合図のように、けほっとひとつ咳払いをした。

「…唐突なんですけど、吸血鬼、って、ご存じですか…?」
「きゅう、けつ、き?って、あの、血を吸う…?」
「そうです。…で、あなたの首筋にある、その痕、なんですけど…」
「痕?あ、これか」
彼女は自分の首筋を手で探り、いたた、と小さく言いながらその痕に触れた。
「…それ、僕が付けたものです」
「…へ?」
「吸血鬼、なんです。僕」


文字通り、口をあんぐりとあけたまま固まった彼女。そうですよね、そんな非現実的なこと言われても、すぐに信じられるわけないですよね。ごめんなさい、僕はトマトジュースは嫌いなほうだし、ケチャップなんかなくても生きていけるけど、ごめんなさい、誰かの血を吸わないことには生きていけないなんとも奇特な体質なんです。



ハロー、弱腰吸血鬼!





突発的に始まった吸血鬼アレンさん連載企画。まったくこの先の展開考えてません。ぱろでぃだいすき!
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