dgmこびん | ナノ

※拍手お礼文
『beyond the pale』番外編*・゚




「…ここ、また間違ってる」
冷たい声でそう呟やかれて、わたしはびくっ、と身を縮ませた。しゃっ、と勢いよく響いたサインペンの音に、ああ、先生は今苛々しながらペケマークを書いたんだと、いよいよ生きた心地がしなくなってきた。




 ―beyond the pale 番外編―




「いち、にい、さん……65点。ハイやり直し。」
「うー…!」
ぶっきらぼうに突っ返された答案用紙を受け取り、思わず唸ってしまう。
「何が『うー』ですか、現実をしっかり受け止めなさい」
「…先生、なんかいつもより手厳しい…」
ぽそりと不満を呟くと、それを聞き逃さなかったアレン先生が「はぁ?」とガラの悪い顔になった(や、やくざみたいだ…!)。
「甘えたこと言わないでください。今度の期末で英語の学年トップ狙うんだって豪語してたのはどこの誰でしたっけ?」
「…わたしですすみません…」
「だったらぶつくさ言ってねぇでさっさと頭と手ぇ動かせや、ああん?」
「(ちょ、誰!?この怖いひと誰!?)はいぃ…っ」

今この英語研究室にいるのは、わたしと、(やくざみたいな)アレン先生だけ。…いつもだったら、二人きりになった時は、もっとこう…いい雰囲気というか……と、とにかくこんなギスギスした空気にはならない、のに…!

コンコン、ガラッ
「失礼しまーす、アレン先生ー部日誌持ってきたよー」
「ああ、ありがとう、遅くまでご苦労さま。気をつけて帰ってね」
「はぁい、さよーならー」
がんばってね、とわたしに手を振って、友人が帰っていった。
「…先生、その笑顔をわたしにも向けてください」
「だったらそれに見合う成績を残しなさい、ほら次の問題手ぇ止まってますよ」
「わーん!オニー!アクマー!」
「…僕、『アクマ』って聞くと何故か左手が疼くんですよね…こう、ぶん殴りたくなるような…」
「すみませんでした」


…自慢じゃないが、英語の成績は上位に入ることが多い。元々好きな教科なのだ。そんなわたしがなぜアレン先生のスパルタ個別指導を受けているのかと言うと…単純な話、気の緩みで、前回の中間試験の結果が散々だったのだ。「僕の担当教科だけガタ落ちって、どういうことですか」と散々アレン先生に問い詰められ、思わず「期末ではトップになる」と約束してしまったのだ。
かくして、期末までアレン先生の個別指導(という名のいじめ)が始まった。ほらアレン先生ってああ見えて実は性格ドSだから。今日だって今回の期末以上のレベルの課題出してくるしね。


「…期末でトップになったら、」
「え?」
「君がしっかり約束を守ることができたら、何かご褒美、あげましょうか」
デスクを肘置きにして、頬杖をつきながらアレン先生が言った。
「ほんと!?」
「こら、手ぇ止めない」
「あぅ、」
思わず顔を上げたわたしの額に、アレン先生のデコピンが飛んできた(あ、あんまり痛くない…手加減してくれてるやつだ…)。
「ほら、よくあるじゃないですか、家庭教師と教え子の話とかで、『次のテストで良い点取れたら、ご褒美やるよ』みたいな」
「はぁ…(よくあるのかなそれ…)」
「80点ならキスで、90点ならディープで、100点取れたらエッ「先生もういいですそれ以上話さなくて結構です問題解けました見てください!!」…ちぇ」
な、なに、何このひと…!そんな話を喜々として話す先生の神経が分からない…!

「…はい、正解。さっき間違えたところもちゃんと応用できてるじゃないですか」
急にほめられて、わたしは妙に心臓が高鳴ってしまった。ずるい、その不意打ちのアメはずるいよ先生…!

「…さっきの、ご褒美の話、ちゃんと考えておいてくださいね」
わたしの答案用紙をトントンと整えながら、アレン先生がさりげなく言った。
「え、本当に…?」
冗談だと、思ったのに。
「頑張ってる子には優しくしたいんです、先生は」
にこ、と、綿菓子みたいな柔らかい笑みを浮かべた先生。かあぁ、と熱くなる頬を、思わず両手で押さえた。
「何でもいいんですか…?」
「いいですよ、お金以外なら」
「えっと、じゃあ…」

わたしは先生に近づいて、そっと耳打ちをした。

「…え、そんなことでいいんですか?」
「え、」
「学年トップですよ?もっと大胆なご褒美を欲しがってもいいんじゃないですか?」
「で、でも…」
「ていうか、それじゃあ僕の方が物足りません」


たったそれだけで止められる自信は、ありませんからね?


「…っ!」
そう言って、今度は先生に耳打ちされた。

「期末の結果が楽しみです」
「…先生、恐ろしいです…!」





***

アレン先生が思った以上にドSで変態になった。やだなこんな教師…笑
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