dgmこびん | ナノ

似てないね、とか
あんなかっこいいお兄ちゃんがいていいなぁ、とか
それにしても似てないね、とかとか(2回も言うな分かってるわばか!)
この兄のせいで、周りから良かれ悪かれ噂されることにはもう慣れっこだ。だから今更劣等感も何も感じたりしないし、兄は兄で、わたしはわたしなんだ、それでいいんだと思うようにした。


わたしの帰りが、彼の言う『門限』の6時を過ぎたことで、彼はいたくご立腹なようだった。
「…だから、友達のとこに行ってただけだってば」
「嘘つくなさ!兄ちゃん知ってんだかんな!男だろ!お前男ができたんだろ!」
「うわぁ、ちょ、顔近いから。目ぇ怖いから」
「うわぁとか本気で言うな!兄ちゃんさめざめと泣くぞ!?」

そう言って、本気でぽろぽろと涙を流し始めた我が兄、ラビ。そんな兄に、本気で引いた妹のわたし。ラビ、なんて、愛くるしい小動物みたいな名前だが、彼はまがりなりにも人間、ましてや年齢的には立派な大人である。
確かに顔だけで言ったら、わたしと違ってそれはそれは大変整った顔立ちをしている。身内の贔屓目で見ても、かっこいいと思う。顔だけはね。

ただ問題なのは、この兄が本当に『顔だけの男』であるということ。
彼をかっこいいともてはやす人達の中で、今から話す彼の生態を知る人は果たして存在するだろうか。


彼は今でも、妹のわたしと一緒にお風呂に入りたがるし(ただの変態だよ)、門限6時だし(なんで兄が門限決めてるのよ)、ちょっとでも反抗すれば「めっ!」って言って怒られるし(めっ!ていくつだわたしは)、わたしの友達の前でも、平気でわたしに抱きついてくるし(そこ、黄色い歓声上げないで)。
本当に、言い出したらキリがないくらい恥ずかしい兄。

「なまえはいつからそんなにオレにツンツンするようになったんさ、兄ちゃんはショックで心臓が抉れそうさ」
「お兄ちゃんにデレデレしてた記憶もないんだけど」
「してたもん!昔は『おにーたんとけっこんすりゅ!』(裏声)って言ってくれたもん!」
「(うわぁ、気持ち悪い!)あ、そうなんだ、ごめんね覚えてなくて」
「お前全然申し訳ないと思ってねぇだろ!本当にそう言ってたんだからな!ちょっ、パン食べながら立ち歩くんじゃありませんはしたない!マーガリンは出したら冷蔵庫にしまいなさい!そして兄ちゃんの話を聞きなさい!ほらここ座って!シットダウン!」
「お兄ちゃんこそ、わたしの洗濯物と一緒に自分のパンツ洗わないでよ」
「オレは娘を持つ父ちゃんか!?何その反抗期!」
「だってお兄ちゃんのパンツと一緒に洗われると、なんか、悲しくなるんだもん…」
「おまっ…何さその根拠のない理由!めっちゃえげつない!おかーさん!この子ものすごくえげつないこと言ってきたさ!」
「お風呂入ってきまーす」
「ちょ!待つさ!オレも行く!待ってなまえ!」
「来ないでお願いだから!おかーさん助けて!」

有り得ない。妹のお風呂に本気でついてくる兄などいるだろうか。





***

「あっははは!相変わらずですね〜ラビ」
「もう有り得ないですよ…アレンさんからも何とか言ってやってくださいよ」
「あは、ごめん、できれば関わりたくないや」
「ひどいやアレンさん!人でなし!ばか正直!」
「あははは」
アレンさんでは埒が明かないようだ。わたしはその隣でマイペースにお茶をすする神田さんに助けを求めることにした。
「ねぇ、神田さんはどう思います?うちの兄!」
「…あ?知るかあんな変態兎」
「ですよねー!」
だめだ、二人ともわたしの話なんて笑い話程度にしか聞いてくれない。本気で悩んでいるのに。
アレンさんと神田さんは、兄のことをよく知る友達で、兄と同じ大学。今日はこうして兄の大学にお邪魔している。公立大だから部外者の入場も難なくできてしまう。
「つーか、わざわざ大学忍び込んでまで相談したかったのかよ」
「そうですよ、結構真剣に悩んでるんですよ」
今日は兄だけ取っている授業がないから(おそらくバイトに行っている)、ゆっくり二人に相談できると思ったのだ。

「要するに、ラビのシスコンっぷりと過保護っぷりをなくしてほしいんですよね」
わたしがミルクティーをほんの少し飲んだ頃、アレンさんが言った。わたしがうんうんと頷くと、さも名案が浮かんだかのように、にやりと笑った。……アレンがこういう笑顔を見せる時は、大抵ロクなこと考えてねぇさ、って、前に兄が言っていた気がする。
「…少し荒療治ですが、いい考えがあります」
「お前の『少し』はあてになんねぇよ」
神田さんのコメントに、わたしも便乗して頷いた。この人、いい人そうに見えて実は誰よりもお腹のなかがまっくろくろすけまみれだ。

「僕か神田のどちらかが、なまえの彼氏を演じるんです」
アレンさんはそう言って、自分と神田さんを指差した。
「…は?」
「いや…なんていうか…逆効果な気が…」
神田さんとわたしは、それぞれ頭に?を浮かべて首を傾げた。…そうだ、わたしの男性関係には、人一倍過敏になるあの兄だ。そんな作戦が上手くいくわけがない。わたしが中学生のとき、同じクラスの増田くん(サッカー部)と一緒に帰ったのを兄に目撃されたときなんか酷かった。わたしはすぐに家に強制送還され、翌日、増田くんの下駄箱には大量の不幸の手紙が入っていたのだ。それに恐れをなした増田くんは、それ以降わたしに近づこうともしなくなった。わたしに彼氏ができないのは、他でもない、あの兄がいるせいなのだ。
「彼氏になった、なんて言えば、神田さんかアレンさんが痛い目に逢いますよ」
アレンさんはなんか大丈夫な気がするけど。むしろ倍返ししそうだけど。
「案外、『あ…そっか、まだまだ目の離せない妹だと思ってたけど…なまえも、もう立派な女性なんだよな…オレも、いい加減妹のこと、信じてやらねぇとな…』って改心するんじゃないかという予測です」
アレンさんは片目を手で覆いながら(それ眼帯?)、どこか遠くを見つめて目に涙を浮かべて呟いた。何ですかその無駄な演技力。
「いやー…嫌な予感しかしませんよ…」
「やる前から失敗を恐れて結局踏み出せないのが、日本人の駄目なところですよ」
「…てめぇ、日本人なめんなよ、やるときゃやるんだよ」
「神田さん!?」
よく分からないけど、神田さんの侍魂に火がついたらしい。
「上等だ、やったらぁ。行くぞなまえ、今日からこのオレが彼氏だ」
「神田さん!!?」
「神田は走り出したら止まらないタイプなんです。彼氏役は決まりですね」
アレンさんは楽しそうに笑って、なぜかデジカメを携えてわたしたちの後を追った。そのデジカメが悪用されないことを祈るばかりだ。



***
「…ここが、バイト帰りにラビが必ず通る道だな」
「はい、多分」
わたしと神田さんは、日の暮れだした路地裏に隠れて、兄のバイトが終わるのを待った。
「で、彼氏って何すんだ」
「知りませんよ、神田さん付き合ったことないんですか?」
「いや、なくなはいが…」
「何でそこ濁すんですか」
デジカメ片手に、「じゃあ、ラビにみせつけるようにいちゃついてくださいね」という不穏なコメントを残して去っていったアレンさんは、多分他のどこかで観察してる。この兄の相談の一件で、わたしはアレンさんへの信用をなくしそうだ。
「とりあえず、あれだ、いちゃつけばいいんだろ」
「そんなさらっと言いますけど結構きついですよ…」
「だな……」
本当の彼氏彼女でもないわたしたちは、当然ながらいちゃつくような雰囲気にもならなかった。


「…お前ら、ってさ、」
しばらく続いた沈黙を、神田さんが消した。

「ラビとお前さ、その……血は、繋がってねぇんだろ?」

神田さんはわたしのほうを見ないで、地面にずっと顔を向けながら喋っていた。

「…そう、ですね…兄がうちに来たのも、わたしが赤ちゃんのときだったから、あんまりそういう実感もないんですけどね」
兄とわたしがこうも似ていないのには、ちゃんとこういう理由があったからだ。
「…ラビの、シスコンっぷりは、本気でお前のこと好きだからじゃねぇの、とか、ごくたまに思うんだよ」
神田さんの言う『好き』が、そういう意味での『好き』だっていうことを、わたしは知ってて分からないふりをした。
「…わたし小さい頃、よく出先で迷子になってて…一番最初に見つけてくれるのは、必ず兄だったんです」
怖くて寂しくて、泣いていたわたしを、誰よりも早く助けてくれたのは、あの兄の笑顔だった。
「…たまに、もうほんとどうしようもない兄だなぁって思うんです。でも、わたしにとっては唯一の兄弟で、大切な、家族なんです」
たまにうざいですけどね。わたしはそう言って、へへ、と情けなく笑ってみせた。神田さんは何も言わずに、薄く微笑んで、それから、わたしの頭を優しく撫でてくれた。
「(か、神田さんが笑った!)…あ、のっ、」
「…お前がいて、あいつも救われてんだろうな」
神田さんの王子みたいな微笑みが、わたしに向けられていることが、何より信じ難かった。なんでわたしのまわりの男性はこうも顔が整っていらっしゃるのか。神田さん然り、アレンさん然り、我が兄然り。

「…なんか今ならいちゃつける気がしてきたな」
「しんみりモードぶち壊しですよ神田さん」
その時、神田さんの携帯のバイブが鳴った。携帯を見て神田さんがチッ、て舌打ちしたところから、相手はどうやらアレンさんのようだ。
「…何だモヤシ」
『何本気で惚れかけてんですかバ神田。その頭に乗せている手は何ですか』
「ところでお前はどこから覗き見てんだ」
『よくスナイパーが構えているようなところです』
「…ビルの屋上だな!?それかマンションの一室だ!」
『すぐそこのコンビニです』
「コンビニにスナイパーはいねぇよ」
『それはさておき、そろそろ標的がそちらを通りますよ。いちゃつきスタンバイお願いします』

ぴ、と静かに携帯を切ってポケットにしまった神田さん。
「アレンさん、何て?」
「…あいつ、スナイパーが何なのかちっとも分かってねぇ」
「すな…え?」
「いや、何でもない。ラビがもうすぐここを通るらしい」
「早くそれ言ってくださいよ!」
どうしようどうしよう!わたしが一気にてんぱりだすと、妙に落ち着いた神田さんが、「おい、」と声をかけてきた。
「かか、神田さん!そんな落ち着いてる場合じゃなっ……わっ」

「いいから、お前が落ち着け」
神田さんが、強い力でわたしを抱き寄せる。耳のすぐそばで、神田さんの心臓の音が聞こえる。だけどそれよりも、自分の心臓の音のほうが、よく聞こえる。
「オレが何とかするから、お前は黙ってオレにくっついていればいい」
「…な、何とか、って…」
ちらちらと、抱き合っているわたしたちを横目で見ていく通行人の視線が痛い。「あらあら、若いわねぇ」って、スーパー帰りのおばちゃんがほほえましく声をかけていった。ほんと、すみません、こんなことになって、神田さんまで、巻き込んでしまって。
「…神田さん、すみません」
「あ?いいから黙ってろ」
「こんなことに巻きこんでしまって、すみません」
「巻き込むも何も、提案者はモヤシだろ」
「でも、わたしが相談なんてするから…」
「もういいから、それ以上謝んな。こっちだって好きでやってんだからいいんだよ」
「で、でも、神田さんはやりたくな…」

「…いいから、もう黙ってろ」

そう神田さんの声が聞こえて、それと同時に、わたしは顎を持ち上げられて、
神田さんに、口を塞がれていた。


しばらく塞いでいた神田さんの唇が、ようやく離れて、肩で息をしているわたしに、「下手くそ」と笑った神田さん。下手くそうんぬん以前に、いくらなんでもやりすぎだ、と、言葉にならない感情で神田さんを睨みつけた。

ふと、神田さんがわたしから目線を横にずらした。

その目線の先に、いたのだ。

「…お兄、ちゃ…」


兄は、目を大きく見開いて、立ちつくしていた。やばい、怒られる!『てんめぇぇ何やってんさユウ!!オレのなまえに触んじゃねぇパッツンがあぁ!!』と、怒り狂う兄を想像し、わたしは全身から血の気が引いた。
「…あ、あの…」
咄嗟に言い訳を考えようと口を開くと、兄は、ふい、とわたしたちから顔を背け、すたすたと、何事もなかったかのように歩き出した。
思ってもみなかった、兄の行動。今度はわたしは、目を見開いて立ちつくしていた。

兄は、何も、言わなかった。




***

「…ただい、まー…」
こっそりと玄関を開けるも、母の「あら、おかえりなまえ!遅かったわねぇー!」という威勢のいい声が家じゅうに響いた。条件反射のように兄の姿を探すと、リビングにはいなかった。
夕飯できたからラビ呼んできて、という母の頼みを武器に、わたしは兄の部屋に向かった。いざドアの前に立つと、何をどう話すつもりなのかもまとまらないまま、わたしはドアをノックしてしまった。
コンコン、
「…お兄、ちゃーん…?」
控えめに呼んでみたけど、返答はなかった。これはいよいよ接近戦を迫られたようだ。どうにでもなれと、わたしはゆっくりドアを開けた。見慣れたベッドに、うつ伏せで寝転んだ兄の姿を見つけた。
「…お兄ちゃん、ご飯できたよ」
「………」
本格的に寝入っているのか、返事がない。少し勇気が湧いてきたわたしは、兄に近づいて少し身体を揺すった。
「お兄ちゃん、寝ちゃった?」
「………何なんだよ、あれ」
兄は寝てなんかいなかった。はっきりと、だけど滅多に聞かないような低音で、兄は呟いた。そしてゆっくりと身体を起こして、
「ユウと、道端で何やってんさ、お前」
問い詰めるように、わたしを視線でがんじがらめにした。
怖い、と思った。だけど、『あのリアクションじゃラビの真意が掴めないです、確かめてきてください』とアレンさんに言われていたのを思い出した。あろうことか、わたしが神田さんにちゅーされている瞬間の画像をデジカメでちらつかせながら。(『確かめないと、この画像、ばら撒きますよ』とその目が言っていた。)
「…あのね、お兄ちゃん、」
わたしと神田さんが付き合ってるって言ったら、兄はなんて言うんだろう。
アレンさんの言うように、シスコンでなくなるのだろうか。もう一緒にお風呂に入りたいなんて言わなくなって、門限を破っても怒らなくなるのだろうか。
「………」
何だか、それ以上言葉を紡げなかった。

「…あいつらに、何を吹きこまれたか知らねぇけど、あんまり近づくな、遊ばれんぞ」
「…神田さんもアレンさんも、そんな人じゃ、ないよ」
何だか二人を悪く言われたようで、わたしはつい口をはさんでしまった。なんだかんだで、わたしの相談にもああして親身になってくれる優しい二人なのだ。
「お兄ちゃんだって、友達でしょ?そんなふうに言っちゃだめだよ」
「何でなまえがあいつらを庇ってんだよ」
兄の口調が、少し苛ついたのが分かった。だけどわたしも今更引けなくて、口喧嘩はだんだん膨れ上がってきた。
「大体、お兄ちゃんは過保護すぎるんだよ!」
「大事な妹なんさ、過保護になって当たり前だろ?」
「お兄ちゃんのは度が過ぎるんだよ!もうわたしだって高校生なんだから、好きな時間に帰りたいし、お風呂は一人で入りたいし、恋愛だってしたいんだよ!!」
「…お前、ユウのこと、好きなの?」
ぽつりと、静かに尋ねた兄。
「…わたし、神田さんと、付き合ってるもん」
…ああ、言ってしまった。人生最大の嘘を、わたしは兄に吐いてしまった。
「……今、なんつった?」
「…だから、神田さんと、」

最後まで言い切らないうちに、わたしはぐいっと引っ張られ、ひどく安心する匂いに包まれた。兄の髪からはわたしと同じシャンプーの匂いがして、服からはわたしと同じ柔軟剤の匂いがする。

「…昔っから、お前は目が離せなくて、ちょっと目を離せばすーぐ迷子になるし」
「…ごめん」
「だから、オレが守ってやんなきゃ、って、子どもながらに決心したわけさ」
兄はわたしをぎゅう、と抱きしめながら、昔を思い出したみたいに、話した。先程までのピリピリした空気からほんの少し解放された気がして、わたしは大人しく兄の腕に収まっていた。
「…血が、繋がってないっていうのを初めてお前が知った時、覚えてる?」
「…うん」
わたしとおにいちゃんは、ほんとのきょうだいじゃないの?って、泣きじゃくりながら兄を問い詰めたんだ。兄は申し訳なさそうに笑って、「血が繋がってなくても、オレはずっとなまえの兄ちゃんさ」って、わたしの頭を撫でてくれた。
「…正直、血が繋がってなくて、良かったと思うようにもなったんさ」
「なん、で、」

「だって、こんな感情、本当の妹に持ってちゃ、いけねぇだろ?」
兄は昔みたいに、申し訳なさそうに笑った。
神田さんの言っていた、『本気でお前のこと好きだからじゃねぇの』っていう言葉が、引き出しの中からふわふわと浮いてきた。
何て言ったらいいのか分からなくて、わたしはずっと俯いた。
「…わりぃ、困らせたよな」
兄の言葉に、ただ首を横に振るしかできなかった。
「せめて、さ、お前が嫁に行くまでは、兄ちゃんに独占させてほしいんさ」
「でもわたし、神田さんと付き合ってる」
「おま、このタイミングでまだそのネタ引っ張ってくんのかよ」
「そもそも、嫁に行くまでの期間が大事なのに」
「じゃあ、嫁に行ってから…」
「お嫁に行ったらわたしは旦那様のものですよ」
「…じゃあ、オレはどうすればいいんさ…っ!!」
本気で頭を抱えている兄に、あれ、さっきまでの怖い兄はどこへいったのだろうと思っていると、

「…分かった、じゃあ、オレが嫁にもらえばいいんさ」
これで万事オッケーだろ?とでも言うように、誇らしげに笑ってみせる兄。もうどこからつっこんだらいいのか分からない。
「それまでの間は、しょうがねぇからユウにもお裾分けしてやるさ」
「ちょ、人を夕飯のおかずみたいに扱わないでくれますか」
ていうか夕飯できたよって呼びにきたんだった。わたしは兄の真意を掴み取ることを諦め、急いでリビングに向かおうとした。
「お兄ちゃんも、早く降り……うわ、」
「人が一世一代の告白したっつーのに、お前は兄ちゃんよりも夕飯を取るんさ?」
…うわぁ、いつもの面倒くさい兄だ。この絡み方になると厄介なんだよなぁ。
「…っ、ちょっと、離してよ」
「やーだ」
兄はわたしの首に顔を埋めた。首筋に、嫌な予感がした。
「…痕つけたら殴るからね」
「ごめん、もうつけちゃった」



だって、お前はオレのもんだろ?



「だから、誰にも渡さねぇさ」
「……っ!」



…アレンさん、やっぱり兄は改心しませんでした。それどころか、シスコンっぷりにますます磨きがかかってきそうな予感がします。




兄に関する一考察





(まぁ、分かってて仕組んだんですけどね)
(アレンさん最低ですね!)



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