04


「おーっす!どーだった?」

「楽しかったッスよ!」

「……オレは胃が痛いよ…。」

「ルツ君は苦労人だねぇ。ヒザシは楽しかったらしいよ。」

「何勝手に人の感想決めてんのよ!」

「じゃあその手に提げた袋は何だい?」

「こっ、これは…。」


痛い所を突かれて黙るヒザシの腕には確かに大量の紙袋が下がっている。
白兎を連れてよくそこまで買えたもんだと彼女を褒め称えたい。


「うっわ、マジ買い込んでんね〜。」

「……所持金の半分分けて欲しかった。」

「何を言ってるんだい?ちゃんとうさぎちゃんが工面したじゃないか。」

「そーじゃん!何あたしの頑張り無視しちゃってんのさ!」

「あんなの」

「あ、もうあんな時間ッス!」


ルツの言葉をタイミングよく遮った白兎が指差した先には美しい夕日が水平線に沈もうとしていた。
普段何気なく視界に収める物でもこうして意識すれば、人の手では決して作り出せない自然の美を感じられる。


「あ、そうだ!うちで飯食ってかね?」

「そ、そこまで迷惑掛けらんな」

「うちの兄貴、美形だよ?それに執事もイイ線ってね。」

「行くわよ皆!サルジスの行為を無駄にしないために!」

「切り替え早!」

「よっしゃ、んじゃ行っくぞー!」


ルツの自然なツッコミを華麗に受け流した三月兎は先導者となり、自分の家兼屋敷へ歩きだした。
一人だけ逃げようとした白兎を逃がすまいと首根っこ掴んで。






「お帰りなさいませ。今日は随分と大人数ですね。」

「まーね。晩飯食ってくって。今すぐ人数分よろしく!」

「仰せのままに。」


一礼した執事の横を各々違う反応で通り過ぎ(どんな反応をしたかは想像に任せる)彼女の屋敷に入って行く。

中の掃除をしていたもう一人の使用人の驚いた反応、起きたばかりと思われる兄の呆然とした反応、そして三人を見たヒザシの反応。

トランプ兵が急遽人数分作った夕飯は三月兎の分が減らされていた。
それに気付いて騒ぎだした彼女に実兄が発砲するいつもの光景。


これらはここに居る全員が共有する思い出である。

思い出は買う事の出来ない宝物、それは頭で理解するのではなく心で感じる物。


ロビンが盗った財布?
それは屋敷までの道程に落ちている事でしょう。

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