04


 ライの家を出てから15分程経って、やっとアイル広場が見えてきた。肝心の青年はちゃんと噴水下のベンチに座っている。待たせた時間は合計40分近く。この真冬の中でこれだけの時間待たされたらいい気持ちはしないに決まっている。
 翠奈と隼人はアイル広場の入口で足を止めた。前を歩いていたライとシアが二人に気付き、振り返った。

「どうしたの?」
「いや……用事があるのはライさんなんで、こっからはライさんだけで行って下さいよ」
「え?まあいいけど」

 そう言うと、ライは不思議そうにしながらも青年の元へ歩いて行った。
 その場には翠奈と隼人、そしてシアが残された。妙に興味津々なシアは、ライが向かう先の青年を見やる。

「なんかこの辺りのヤツじゃねェみたいだな」
「ですよね!かっこいーですよねぇ。最初見たときは見とれちゃいましたよ」
「はーん、お前あぁいうのが好きなの」
「憧れですよ」

 翠奈とシアがそんなどうでもいい話をしている間に、ライは青年の元にたどり着いた。青年はライに気付いたらしく、顔を上げた。ライの方から口火を切った。

「待たせてしまってゴメンネ」
「洋酒のたっぷり入ったチョコレートはどこで売ってるんだい?」
「たっぷり……はないと思う。あいにくこの村は未成年ばかりだから」
「本当かい?これは困ったな。せっかく14日、ルツ君にあげようと思ったのにねぇ」
「ルツ君?」

 話が広がっていきそうだったので、ライはベンチの端に腰をかけた。青年はベンチの上であぐらを組み直すような格好になった。ライも身長が低い方ではないが、その青年と並ぶと幾分小さく見える。
 尚も会話は続く。

「ルツ君はお酒に弱くてねぇ。何も知らずに洋酒がたっぷり入ったチョコレートを食べると面白いことになると思ったんだけど」

 それを遠くから耳を澄まして聞いてきた翠奈と隼人とシアは心の中で絶叫した。居ても立ってもいられず、アイル広場の入口にある時計台の影に隠れて小声で話す。

「ちょっ……すごくタチ悪いじゃないっすか!」
「ヘタしたら犯罪でしょ!」
「ドSだ……ライを超えるドSだ……!」

 そんな三人の存在をライもすっかり忘れているようだ。「この村にはあるって聞いたんだけどね」と溜め息をつく青年の隣で、ライは何か思い付いたように「あ」と声を漏らした。

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