03


 コンコンコンコン!
 ……ガチャ。

「ノックは一回でいいよ……ってなんだ、翠奈と隼人か」
「ライさんっ!早く来て下さい、ちょっと難し……じゃない店を探してる人がいるんですよ」
「なんか洋酒のたっぷり入ったチョコを探してるらしいっす」
「何で僕に言ってくるの?二人で探してあげたら?」

 目には目を。歯には歯を。ドSにはドSを。
 これが理由だなんて、目の前で腹黒スマイルを浮かべる彼には口が裂けても言えない。しかし、あの青年はアイル広場で待っているのだ。そんなに長い間待たせる訳にはいかない。
 翠奈と隼人が言葉を詰まらせていると、奥からシアが出てきた。

「なんか面白そうじゃねェか!行こうぜ、ライ」
「えー…………うーん、まあいいか。家でいても暇だし」
「(ナイスシアさん……!)よしっ!じゃあ行きましょう行きましょう!アイル広場で待たせてるんです!」

 翠奈は高速でライとシアを手招きしながら、しきりに「早く早く」と口に出していた。夏の集落からここに来るまでに10分は経過していた。集落の外と言えば季節は冬。あの格好ではどう考えても寒い。寧ろ凍える。
 そんな翠奈や隼人の気持ちをよそにライとシアはマフラーを巻いたり、ブーツを履いたりとのんびりしていた。急いでいる側としてはわざとスローモーションで支度しているのではないかと思う程であった。

 やっとのことでライとシアが出てきた頃には、あの青年と話をしてから20分が経過していた。

「お待たせ」
「もう!遅いっすよ!」
「隼人?まだ10分しか経ってないよね?そんなに急かすならいーんだよ、別に行かなくったって。わ ざ わ ざ 僕が出向いて行くんだからね?」
「す……すいません……」
(腹黒いよぉぉ……!)

 翠奈は心の中で隼人をそう哀れむと共に、その矛先が自分に向かなかったことを幸運に思った。シアはそれを「ざまあねェな隼人!」と高らかに笑っていた。
 四人は往路より幾分ゆったりした速度でアイル広場に向かうことを余儀なくされた。

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