「ルツさん、大丈夫ですか?」

仰向けに寝転んでいた彼の視界に現れたのは、自分の仲間にはいない金髪の少女だった。

「……大丈夫」

どうやらいつも絡んでくる彼女の妹はいないようだ。少女はルツに手を差し出した。

「い、いいよ。自分で起きれる」

「そうですか」

「……何してるの?麗羅」

「散歩です」

「そう」

「あ、麗羅いたー!!」

穏やかに話していた二人の背後から聞こえた声。その声の主は猛スピードで走ってきて、勢いよく麗羅に飛び付いた。

「万里……」

「あ、ルツさんだ!こんにちはー!」

「……こんにちは」

ニッコリと笑う万里にルツは少し顔をひきつらせた。

「麗羅、ルツさんと二人で何してたのー?」

「いや、私もルツさんとはさっき会ったんだ」

「あ、そうそう!るーちゃんが麗羅を探してたよ!」

「流夏さんが?」

「ヨシュアさんと話してるな、と思ったら突然ね!」

万里はおもしろそうに笑うが、麗羅は不思議そうにしていた。それを見ながらルツは今この場にはいない小柄の侍に同情した。

「あ、ヨシュアさん!」

「ああ、まだ流夏君は来てないんだね」

「流夏に何を言ったの?」

「大したことじゃないよ」

「そう……」

彼は本当によくからかわれるな、とルツは再び同情した。

「あ、それよりルツさん!これ食べない?紗希が作ったクッキーなんだけど」

「へぇ。まあ、悪くはなさそうなクッキーじゃないか」

「あ!」

そう言ってヨシュアがクッキーを一つ口に放り込んだ。するとすぐに顔をしかめた。

「なんだい、これ」

「辛いものってことで、唐辛子味です!」

「全く、そんなもの一体誰が食べるんだい?」

「私とルツさん!しかもこれはですね、あの紗希が作ったんです!ただ単に唐辛子をクッキーにしたら美味しくなさそうだけど、これはすごいですよ!どう作ったんだか教えてくれませんでしたけど!」

「あ、美味しい」

「さっすがルツさん!あ、麗羅も食べる?」

「いや、私はいい」

「君たちおかしいんじゃないの?そんなのを美味しいだなんてさ」

「美味しいですよ!」

「ヨシュアー!!」

一同の背後から怒声がした。そして勢いよく走ってくるのは紫の着物をまとった流夏だ。

「貴様!」

ヨシュアに跳び蹴りを食らわせようとしたが、ヨシュアはそれを難なく回避し、代わりにルツに命中した。

「痛い……全く、なんで僕なんだよ」

「わ、悪い」

流夏とはいえ、流石にこれには申し訳なさそうに謝った。

「もう!さっきからうるさいよ、るーちゃん!」

「いきなり現れて騒がしいね。耳障りだから少し静かにしてよ」

「原因は貴様だろ!」

「少し落ち着いて下さい、流夏さん」

「うっ!」

麗羅に言われて流夏はようやく大人しくなった。

「で、何を言われたの?」

「コイツが……言えねぇ!」

「なんですか?」

「あーあー、私はなんとなくわかったよ。麗羅、少し向こうに行っててくれる?クッキーあげるから」

「それは辛いだろ?……ん、意外といけるな。わかった」

「……麗羅、食べ物につられるんだ」

「で、るーちゃん?どうせヨシュアさんには、るーちゃんが麗羅を好きっていうのを本人にばらすって言われたんじゃないの?」

「何故わかった!?」

「へぇ。よくわかったね」

「流夏、本当にいじられやすいね……」

「麗羅、もう来て大丈夫!」

万里が何故かルツの手を引きながら麗羅を呼びに走った。そしてまた勢いよく麗羅に飛び付いた。

「麗羅には言ってないから安心しなよ」

「そうか……」

「言わないほうがおもしろいからね」

「貴様……!」

流夏はヨシュアを睨み付けながら剣に手をかけた。しかし、いつものように抜刀はしなかった。

「アイツが楽しそうだから、見逃してやる」

「ふーん。つまんないなぁ」

「言っとけ」

そして流夏も麗羅たちのほうへ歩いて行った。


誕生日のお祝いにいただきました!
るーちゃんとヨシュアのからみが多くてうはうはです、もう最高の誕プレだと思ってます!と言うかだまされるるーちゃんが可愛すぎるvv
ただ、最後の「アイツが楽しそうだから〜」って台詞は男前ですよね、かっこいい…!

にやにやのとまらない素敵なコラボ小説、本当に有難うございました!


七条雫さん/文
(2010/06/01 10:08)

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