欲望の果てに、 希望があると思っていた あるところに、誰よりも欲深い王様がいました。 彼は、どこよりも強くて大きな国を手に入れたいと思っていました。 その為に、何十年も戦いを続けました。 そして、勝ち続け、国はどんどん大きくなりました。 そんなある日、口髭の生えた中年の兵士が、王へ問いました。 「王よ、いつまで戦を続けるのだ?」 「おぉ、お前か。この国が世界一になるまで、私は戦い続けるぞ」 その口髭の生えた兵士は、王の最も親しい友人で、彼が誰よりも信頼している相手でした。 「…しかし、これ以上続けることは――」 「心配するな。これ以上長引かせはしない」 王は優しく微笑んで、そう答えました。 また別の日、長い金髪の綺麗な女性が王へ問いました。 「あなた、まだ戦いは終わらないの?この子も外で遊べなくて可哀想よ」 女性の後ろからは五、六歳くらいの少年が顔を覗かせていました。 その綺麗な女性と小さな少年は王の最も愛する人たちで、この国の王女と王子でした。 「大丈夫、もうすぐ終わるさ。もう脅えながら生活しなくていいんだ」 二人に微笑んで、少年の頭を撫でました。 そして、ついに戦いの終わるときがやってきました。 すべての国に勝利した王は、世界一になることが出来ました。 「これが私の望んでいた世界か…」 何かを見つめながら、王は寂しそうに呟きました。 彼の目の前には、二つのお墓がありました。 一つは彼が最も信頼していた者のお墓、もう一つは彼が最も愛した者たちのお墓でした。 「どうして…」 王は二つのお墓の前で泣き崩れました。そして、初めて気付きました。 王の望んだ世界に、王の望んだものなど何もなかったということを。 -END- 望んだ世界 (2009/05/19 19:09) |