《ミハベ》

2人の距離


コンビニに行き、パンやら飲み物やら
食いたいもんを買う。
それから、チャリの側で買ったものを食べた。
俺はパンを口にしながら、三橋の品物に目をやる。
"軽く"の割には結構な量だ。
俺はパンを飲み物で流し、三橋に話しかけようと話題を考えた。

(確かこいつは、食べ物が好きだから)

とその話から入ったけど反れに反れて
気づけば、ミーティングみたいに"西浦野球"の話になっていた。

(何やってんだ俺)

だけど、"会話"が大事だと思い直す。
"会話"をすることでもっと距離が近づくと考えたからだ。
俺は会話が出来るならと、そのまま"野球"の話を続けた。

誘っといてなんだが
正直、三橋と普通に話が続くわけないと思ってた。
だけど、今日はテンションが上がっているらしく
チームメイトのここ最近の調子の事や俺達のバッテリー内の話と
予想以上に話が続く。
話が続くと言っても、10分以内の会話を何回か繰り返す程度だったので
心が近づいてる感じは、全然しない。

(上手くいかねぇな)

紙パックの飲み物に口を付け、ちらっと三橋を見ると目が合う。
だけど三橋は一瞬ビクッとすると、目を逸らして口をもぐもぐさせた。

(何で目を逸らすんだ!?)

プチイラしたけど、今日の機会を台なしにしないようにと
なんとかその怒りを鎮める。

(俺達の関係はこれでも、かなり進歩してるんだよな?)

テンションが上がるとコイツは、いつもよりちょっとだけ流暢に話す。
テンションが上がるという事は、少なからず"イヤ"ではないのだろう。
俺は"そこ"に、更なる進歩の可能性が見えた。

最後の一欠けらのパンを口に入れながら、再び三橋を見る。
三橋は俺の視線に気づき、一瞬目を合わせるが
またすぐに目をあちこちへと泳がせた。

(だから、何で目を逸らすんだよ!?
またそんな反応しやがったら、ウメボシ食らわすっ!!)

さっきより強めの苛立ちがきた。
だけど…。

(ん?)

チラッチラッと俺の様子を窺う三橋の顔が赤い。
どうやら、嫌ってとか怖がってとかの反応ではないらしい。
"そこ"が分かった瞬間、怒りは静かに収まっていく。

しばらくの沈黙。
買ったものも底をつきたので「そろそろ帰るか」と切り出すと
三橋は間を数泊空けて、「う、ん」とゆっくり頷いた。





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