《小説》

魔法にかかる


快斗は、ドスッとソファーに座って体を預ける。
俺は、この前買った花瓶に、今日貰った花を挿して窓側に置いた。
それから、またキッチンに戻ると
俺はカップを2つだし、コーヒーを入れる準備をした。

「ねぇ新一。俺の気持ち知ってるのに
花を捨てたり、誰かにあげたりしないで自分の家に飾るって事は
俺に好意を持ってるからだよね?」
「は!?///」

俺は、突然の言葉に驚いた。

「だって、イヤだったら構わず捨てたり、誰かにあげたりするもんだ。
でも、そうしないって事は、俺を好きだからだろ?」

確かに、心理的に分析すれば当たっている。
だけど…。

「そうだな。だけど、それが"恋慕(好き)"だからとは限らない」

俺は、入れたコーヒーを差し出して
快斗の問に、俺はそう返事をした。
自分のコーヒーをカタンとテーブルに置いた時

「…まったく、新一は鈍いね」

と快斗は、不機嫌な顔で言う。
それから俺の腕を引っ張って、顔を近づけた。

「これのどこが"恋慕(好き)"じゃないのか、説明してくんない?名探偵さん」

俺は体中が火照って、顔が真っ赤だ。
そんな俺を快斗は、探偵に負けないくらいの見透かした目で見つめ続ける。
俺は思わず、顔を伏せそうになった。

(説明しろだって?
こんな事で茹蛸みたいになる理由は、1つしか浮かばない。
お前だって、答えを知ってるくせに)

ちらっと快斗を見ると、快斗はニッと笑って
俺を更に引き寄せ、抱きしめた。

「やっぱな。ま、分かってて攻めたんだけどさ」
「せ、攻めた?」
「そ。だって、せっかく新一が俺を好きになりかけてるのに
それを堕としに行かないわけないだろ?」
「堕とすってお前なぁ…」

俺は呆れて、ため息をついた。
どうやら、俺はとっくに
コイツの"恋の魔法"とやらにかかっていたらしい。




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