《ノーマル》

your name―君の名を呼ぶ―


《シロン視点》



「シ…シロン…シロ―ンッ!」

アイツの前から消えて遠ざかる瞬間、アイツの声が聞こえた。

姿はもう見えないけれど
泣いてるアイツのマヌケ顔が想像出来て、笑えてしまう。
それくらいの時間をオレは、アイツと共有したんだ。

「…」

(別に別れを惜しみたいわけじゃねぇけど
もう少し、アイツと…)

「…何考えてんだよ俺は」

自分の考えた事に、少し呆れ返る。
こうなって気づくんだ。
アイツといるのが何気に楽しかった事に。
そう考えれば
別れの時間が早くて良かったかもしれない。
じゃなけりゃぁ
きっと俺は、いつまでもあそこを離れられなかった。

"シロン"

思い返せばアイツも
カムバックの時以外、なかなか俺の名前を呼ばなかった。
俺もアイツの名前を呼ぶ事はなかった。

だけど…。
言ってみろと言われてもなかなか呼べなかったアイツの名前を最後に言えて良かったぜ。

"シロ―ン!"

お前から返されるなんて想像してなかったけど聞けて良かった。
おかげで、記憶を消されるっつぅのに
"また会えたらいい"
なんて、柄にもねぇ事考えちまってるよ。

そう思って静かに目を閉じると
風からアイツの寂しそうな泣き声と思いが伝わってきた。

"シロン、シロン、シロン"

「風の…サーガ」

俺は閉じた目を開いて、風に運ばれてくるアイツの"想い"を感じ取る。

"なあシロン。お前消えちゃって返す事出来なかったけど
最後に「シロン」てお前の名前呼んだんだ。
叫んだんだよ。
なあ聞こえた?
届いたか?"

俺は口元を緩ませ

「ああ、届いたぜ」

翼を開いて風でそう返事を送った。
アイツの涙を拭うようにやさしく。
と同時に、もう見えない相手に俺は目を向けた。
それから目を閉じ、またその目を開けて

"また会おうぜ、シュウ"

前方の空へと視線を移しながら、アイツの名をまた呼んだ。
それから、更にスピードを上げる為に翼を大きく羽ばたかせ
"風の世界"から俺は姿を消した。




《あとがき》
別れてからすぐの想いを妄想して書いてみました。
シュウが「まだ名前呼んでない」の件から
シロンが「シュウ」と呼んでシュウが思わず「へ?」みたいな顔をする
あのシーンだけで作りあげたようなものだったりします。
なので、シロン視点が意外と苦労しました。




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