《カップリング》

inconsistent―打消しと肯定の間―


それは夕映えの出来事だった。
風のサーガとランシーンが秘密基地の屋上で口づけるのを見ちまったんだ。

2人は口づけが終わると
ランシーンはやさしい瞳でアイツを見て
アイツも照れながらランシーンに笑っていた。
俺はその時初めて二人が付き合ってる事を知る。

あれから数日、どことなく居心地が悪くて
普段通りにしてるはずなのに
イラついた態度になっちまってる。
そんな俺にアイツはこう言った。

「なあ、でかっちょ。なんかあったのか?」

秘密基地の屋上で俺と風のサーガが
2人っきりでキャッチボールをしていた時だった。

「誰がでかっちょだ。別に何でもねぇよっ」

俺は返事をして、ボールを風のサーガへと投げる。
ボスッとミットのいい音がした。

「そんなイラ顔しちゃってさ、なにもないなんて事ないんじゃないのっと」

高く上がったボールを
俺は手を伸ばしてキャッチし

「なんもねぇっつぅの」

と嘘を言ってボールを返す。

「まあ、何かあったら言えよ副部長!
部員たちの悩みを聞くのも部長の仕事だからさ。
言ってくれたらさ、俺がぱぱ〜のびゅびゅ〜んと解決してやるよ」

と言って風のサーガはまた、ボールをおもいっきり投げた。
だが球は、俺からだいぶ反れた方向へと飛んでいく。
それを見た風のサーガは相変わらず
「へったくそだな〜お前」
と俺に言う始末。
俺は、遠くに飛んでいったボールから風のサーガへと視線を移し

「お前な。前から言おうと思っていたが、下手なのは風のサーガ、お前だぞ」

と言葉を返す。

「シュウだよ、シュウ!お前、何回言えば分かるんだよ〜?」
「おい、話をそらすな!」
「そんな事より"シュウ"だよ。ほれ、言うてみ?」
「他人の話を聞けっつってんだよ(怒)」

ぎゅっとアイツの頭をつかんで睨むと

「はい、すみませんでした(汗)」

と素直に謝った。
謝罪の言葉を聞いた俺は落ち着きを取り戻すと
サーガの顔が目の前にある事に気がついた。
と同時に、ふとあの時のシーンが頭を過ぎる。
やるせないあの時の気持ちと共に。

最近、俺はおかしいんだ。

戦いはない方がいいが
出会った頃に戻れたらいいとおもっちまう。

(そしたら、俺のサーガのままなのに)

そう思った時、俺はハッとした。

(…まさか。いや…)

俺はそれ以上考えないようにし
風のサーガの顔を改めて見る。

「あの、シロンさま。そろそろ放してくれませんかね?」

と俺の手をちょんちょんと指差したサーガ。
そう言われて俺は慌てて手を放し、体をあげた。
そして、言葉を付け足す。

「わかりゃあいいんだよ」

俺は腕を組んでそっぽを向いた。

「じゃあ、キャッチボール再開といきますか!」

気にした風でもない風のサーガは
ポンとミットを叩く。
全然、わかったように見えないのがコイツらしい。
俺はサーガをちらっと見てからゆっくりと体を正面に戻し
用意したカゴいっぱいのボールをサーガへとおもいっきり投げ付けた。



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