《ノーマル》

投球練習


「だから。元希さんの球、俺、結局取れてなかったでしょ?初めの頃。
だから見限って、他の捕手を練習相手にして貰えば良かったのに
なんで、それをしなかったのか気になって」
「んな事気にしてたのかよ?アホだな、お前。
つーか、過去にトラワレテルなんて、ちっせぇ」

ズバッとくる物言いに、まぁ多少目をつぶるとして

「で?!なんでですか!?」

とテーブルに両拳をバン!と置いて尋ねる。

「何怒ってんだよ?あ〜そうだな」

俺は返事を待った。

「ムカついた。生意気だった」

それは分かるが、何度も言われるとこっちがムカつく。
そうイライラしていたが

「他がみんな俺をビビってた」

という元希さんの言葉に、俺の怒りの動きがピタッと止まる。

「なのに、お前は生意気にもギャーギャー逆らってきたから、面白かった」

面白かった発言はどうかと思うが
嬉しそうな表情を出さないように我慢してるこの人が
この時ばかりは近くに感じた。

(…気に入られたって事でいいのか?)

こっちまで、照れ臭い感じになる。
今まで元希さんが絡んだ出来事だけは
前向きに考えられなかったけど

(前向きに考えていいよな?あの表情だし)

元希さん、テーブル、元希さんへと視線を戻すと
元希さんはそれに気づいて不快な顔をした。

「なんだよ?てか、お前、いい加減、過去をえぐんな。
腐ってた時の事は忘れてぇんだよ」

そう言われて、自分が無神経だった事に気づく。

「す、すみません!」

と謝ると

「お前だから、まぁいい」

と言われた。
くすぐったい思いだったけど
そこで丁度、ちょっと前の元希さんの台詞を思い出す。

"過去にトラワレテルなんて、ちっせぇ"

「…アンタもちっさいって事っすね」
「は?何言ってんだお前?俺はでけぇぞ?180ある!」

そう自慢げに胸を張る。
元希さんの台詞を使ったのに、ピンとこない辺りがこの人らしいと笑えた。
そんでもって、本物のアホ相手は疲れるなと思う。

(三橋。田島。
お前らは、勉強出来ないだけで普通だぞ(たぶん)。
とにかく、コイツよりマシなのは確かだ)

などと1人、心の中で呟いた。

「なんか今、馬鹿にしたか?お前」
「は?何もしゃべってないですけど?
さて、食べ終わりましたし、帰りますか?」
「ああ、やっとか」

誤魔化しに成功した俺は、元希さんを連れて店を出る。

(今日はある程度、穏やかに終わったぜ)

しかし

「ああ、そういや昔で思い出したけど
ヌイ目クッキリ…。あはははは!」

と、思い出し笑いをした元希さんとケンカを始めるのに
時間はそうかからなかった。

fin.

<あとがき>
ケンカは、この2人の専売特許に近いですね^^
元希さんは、隆也を気に入ってると思う。
なんだかんだ、隆也も元希さんを。
ノーマルでも相思相愛だと踏んでます。
ただ、タイミングと馬が合わないだけだよ(笑)


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