《ノーマル》

Study


「元希さん?」

思うより長い沈黙が続いたので呼びかけると

『それよか、お前らこそしっかりやってんのかよ?』

という言葉が返ってきた。

「大丈夫ですよ。皆で割り振って勉強してますから」

(三橋はマシになってきたし、田島は危ない時もあるけど進歩してるし
うちの部員に赤点はない!)

『そっか。じゃなくて、野球の方だよ』
「野球?」
『今年の武蔵野は、すごく強くなってんぜ?
だからお前らも、もっとセッサタクマしてショウジンしないと
勝つのは武蔵野(うち)にしても、コールド負けになっちまうぞ?』

(使い方は合ってるけど、相変わらず、切磋琢磨・精進は
文字にしたら、漢字じゃないんだろうな)

なんとなく溜息をつきたくなった。

「はぁ〜」
『何溜息ついてんだよ!?あ、お前、俺のこと哀れんだだろ!?』

図星だけど、肯定はしない。

「西浦(うち)だって、強くなってるんです。
コールドなんてありえません」
『話を逸らすな!』
「とにかく、西浦(うち)が負けるなんて、決め付けないで下さい」
『は?お前、今年の甲子園は譲るって言っただろが』
「言ってないですよ!」
『ああ?そうか?あ、じゃぁ、ありゃ夢か』

夢の話を現実に持つ込むなよ!?と、俺はムカッとする。
言い返してやろうかと思ったけど、このままでは話が逸れて
いつもように、けんか腰の"やりとり"が始まってしまうと察知した。

(話を立て直す!)

元希さんの口から四文字熟語も飛び出した事だし
そこから切り出して、話を戻そうと考えた。

「それにしても、切磋琢磨なんて言葉
元希さんがよく覚えましたね」
『前に教えて貰って、とっくに知ってるっつーの!馬鹿にしてんだろお前!」
「してないですけど、他には?」
『"俺は野球で、隆也をカンプなきまでに叩きのめす!"』

いつも野球と関連付けてモノを覚えるとは
秋丸さんから聞いていたが
何故、俺まで出てくるんだろ?という疑問とか
何で俺がアンタに"完膚”なきまでに
叩きのめされなきゃなんねぇんだよ!?という怒りとか
色々な感情が湧き出て、今すぐ問い詰めたい!と思った。

イライラしていると、元希さんの口から意外な言葉が。

『正岡シキ』
「え!?」
『何だよ?何驚いてんだ?』
「いや、だって、野球関連じゃないっすよ!?(俺絡みでもねぇし)
そんな事も覚えられたんですね!!すごい進歩じゃないっすか!
ちゃんと脳みそ使ってるんすね」
『やっぱお前、バカにしてんだろ!?』

アホだと思っているのは変わりないので、否定はしないでおく。

「ちゃんと勉強してるって褒めたんですよ」
『いや、馬鹿にした!アホだと思いやがった!
ナマイキだ!叩きのめす!うちに来い!今すぐ来い!』
「嫌です」
『お前が来ないなら、俺が行ってやる!』
「!やめて下さいよ!」
『いや、行く!待っとけ!』
「来んな!」

そこから話は逸れて、いつものやり取りへと軌道が流れていき

「タカ!うるさいわよ!早く寝なさい!」

と母親に怒られるまで、言い合いは続いた。



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