《榛阿》

告白


チャリが壊れた日、駅で榛名と出会った。

「一緒に飯を食おうと待ってた」と言われて
「俺、チャリなんで、普段は駅使わないんすけど」と言ったら
「そうなのか?でも今日、会う気がしたんだよ」と榛名は答えた。

どんな勘だよ!?と驚きつつ、榛名と一緒に飯を食った。
その帰り。
人通りの多い場所からちょっと外れた通りで
俺と榛名は立ち話をしていた。

「お前の事好きかも」

会話の途中、じっと俺を見つめる榛名に
いきなり言われた一言。
そうストレートに言われるのはやっぱり微妙だ。
"気に入ってる"と言われる方がいい。

とりあえず普通に
「そりゃどうも」
と無表情で答えを返した。
けど、榛名はそれが引っ掛かったらしくムキになる。

「好きだって言ってんだぞ?この俺が。
もう少し嬉しいそうにしたらどうなんだ?」

好かれるのは嬉しいモノだ。ましてや"あの榛名"だ。
けど、俺はこの人に簡単には期待しないと決めているので
簡単には喜ばない。
また、裏切られるのは嫌だから。

"あの試合"後も俺は心のどこかで
"奴の姿勢は変わる"と思ってた。
榛名が引退するまでずっと期待してんだ。
けど結局、奴の姿勢は変わらなかった。
春日部戦やARC戦で
変わったとしても
それは野球に対してだけで
人に対する姿勢は
きっとそうそうに変わるわけがない。

(気に入ってたって
アンタはまた、放置するんだろ?)

「…イヤじゃないから、どうもってお礼は言ったでしょ?」
「俺は嬉しそうにしろって言ってんだ!」

相変わらずの命令口調。
そこがまた、俺は腹が立つ。

「そんなん俺の勝手でしょ?」
「俺は嫌なんだ!
なぁ?お前も俺の事好きだろ?」
「キライじゃないです」
「好きって言え」

(さっきから何なんだ?この人は)

"懐かれている"と思いたいのか。
やたらと「好きだと言え」と強制してくる。
あまりにも煩いので

「はいはい。好きですよ」

と言ってやると

「なんだ!!その言い方は!!」

と怒ったが次には

「お前は俺が好きなんだな。当然だよな!!俺だしな!!
というわけで、両想いだ」

と笑顔で言った。

「その両想いってやめて下さいよ」
「は?事実だろ?」
「両想いって恋じゃないんだから、変でしょ?キモイ」

急に静かになる。
なんだ?と思って榛名を見ると
ビクッとするくらい真剣な顔をこっちに向けていた。

(え?なんだ?)


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