《榛阿》

告白


スッと冷たい空気に変わったのが分かり、息を呑んだ。
異様な雰囲気にやられそう。

「元…」
「恋じゃない?じゃあ、好きって言ったのは何だよ?」
「え、"投手""先輩"としてって事ですけど…」

俺の言葉に怒りにも似た目。
強い眼差しがこちらに向けられ、ごくんと唾を飲み込む。
その音さえ響きそう。

「俺は違う」

と榛名は言葉を発した。

「俺は違う!!俺はお前が好きなんだ!!恋愛対象して好きなんだ!!」

そう真っ赤な顔で告げる榛名。
俺はただ茫然とする。
頭の整理所か何も考えられないくらい真っ白だ。

「好き?元希さんが?俺を?冗談でしょ?」

そう言った瞬間、胸倉を捕まれ、ぐいっと引き寄せられる。
そして、キスをされた。深く長い口づけ。

「んっ」

榛名は唇と共に、掴んだ胸倉をも乱暴に放した。

「ざまぁみろ!俺の言うこと信じねぇから悪ぃんだよ!」

悪びれた素振りも見せずに言い放つ榛名。
すぐに我に返った俺は、一気に血が上って榛名を怒鳴りつけた。

「なっ、何すんだアンタ!」
「何ってキスに決まってんだろ?
しかもディープなやつ。気持ち良かったろ?」

そう言われて羞恥心が煽られ
体の体温と共に、最高潮まで頭に血が上る。

「ふざけんな!んな事あるわけねぇだろ!?」
「なんだよ?お前イイ顔してたじゃねぇか」
「してねぇよ!///」
「してた!」
「してねぇ!」
「生意気!もっかいすっぞ?!」

榛名はまた俺の胸倉を掴んで引き寄せようとした。
俺は片手を胸倉を掴む手に
もう片方を榛名の顔に押し当てて、必死に抵抗する。

(やられてたまっかっ!!)

だけど次第にブロック壁に近づいてる事が解り
ヤバイと思った時にはその壁は背中に当たっていた。
俺の手の隙間から、榛名がニッする顔が見える。
体格差があるし、力じゃ敵わないと実感した。
したけど、俺も負けず嫌いだ。
これで諦めて崩れるわけがない。
しかも"お前の負けだな"みたいな笑みが腹ただしく、力が湧く。
悔しいがこれだけじゃダメだと、片足も抵抗の材料に加えた。

「てめぇ隆也!!腹を足で押すんじゃねぇ!!」
「アンタが離れりゃ止めますよ!!」
「お前が俺に惚れりゃあいいんだよ!!」
「誰がアンタなんか!!」

ぐぐぐっと力の攻防が続くと
先に諦めた榛名が力を抜いて、俺から離れた。

「ったく、強情」
「変態」

榛名の台詞を払い除けて、直ぐさま言葉を返す。
ムッとする榛名の目に合わせる俺。

「んじゃ、明日俺早ぇから帰る」
「ああ、どうぞ。さっさと帰って下さい」

しっしっと手で追い払う。
ムカつくという文字が顔に書かれていたが
ふんっと鼻を鳴らして背を向け、
「走って帰る!」と去っていった。

小さくなっていく背中に怒りは収まり
ちょっとした寂しさが残った。

(その程度の想…ん?ん?サミシイ…?は?何考えてんだ俺?)

困惑する俺は、首を横に何度も振った。
さっき考えた事を振り払うように。

(…さて、帰るか)

地面に落ちた鞄を広い上げ、榛名が走った方向とは逆にある駅へと向かう。
すると、ふいに肩を抱き抱えられ、体が回転した。
柔らかい感触。
目の前の視界が暗闇から人の顔へと変わる。
それが榛名だと認識した時、榛名の笑顔も見えた。

「お前を堕としてみせっからな!覚悟しとけ!」
「!」

満足した顔をして、「さぁ、帰るぞ」と
さも、何もなかったように平然と言う榛名。
何をされたか今更に気づいて
口を押さえながら、俺はその人物を睨みつけた。

2度目のキス。
ふざけんなと思うのに体が熱い。

(くそっ!簡単に堕ちてなんかやらねぇかんな!)

fin.

<あとがき>
この後、2人は仲良く?ケンカしながら帰ったそうです。

さて、普通の榛名+阿部の関係を延長した形の内容に仕上がりました。
ん!やっぱ、これが2人らしい!とか1人で納得。
阿部が鈍感過ぎて、榛名が不憫な事に…。
阿部の言い方キツイけど、榛名は立ち直り早そう。
というか、あまり気にしないタイプかな。
あと、榛名は、"タカヤ勘"がかなり働くと信じてます。



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