《榛阿》
写真
「ほれ」
意外にも普通に戻ってきた携帯。
ムカつかれて、返ってくるまでに時間がかかるかと思っていたから
思わず目を丸くする。
「よしタカヤ!写真撮っからこっち向け」
「へ?」
携帯のカメラをこっちに向けた元希さん。
「何するんですか?」
「写真撮って待受にすんだよ。終わったらお前ので、俺を撮れよ?」
冗談じゃない!
と怒りのエネルギーが沸いて来て反抗した。
「嫌だ!止めろよ!」
「じゃあ、2ショットにすっか?俺はそっちがいいけど」
その言葉に青ざめた。どっちも嫌だ。
けど、この人は本気だ。逃げられるわけがない。
コイツの強引さは、嫌というほど戸田北時代に味わっている。
(写真撮らないと家まで上がり込んで、泊まり続けるに違いない。
この人ならやる!絶対やる!)
俺と家族の危機を感じた俺は
「…それぞれで」
と折れてしまった。
だけど、いざ撮るとなると気恥ずかしいものがある。
カシャ。
「次、元希さんすね」
と携帯を向けると、元希さんは自分の携帯を、じっと見つめている。
(気に入らなかったか?
でも知らね。こんな恥ずかしい事、二度とやるか!///)
ポチポチとボタン音。
納得したらしく保存したようだった。
俺は、さっさと自分のも終わらそうと
携帯を元希さんにかざす。
本人は、1つのボタンを何度か押して
じっと携帯を見ていた。
「元希さん、顔上げ…」
その時、はにかんで嬉しそうに笑う元希さんに見惚れて
思わず写真に撮ってしまった。
そして、うっかり保存。
(うわっ、俺何やってんだろ?///)
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