「ねえリュウジ」
コップに満ちた水は
「ん?」
揺らぐことがない限りこぼれはしない。
コップ一杯の恋
「好きって言って?」
「え、いきなりなんだよ」
「いいから言ってみて」
「…好き」
「俺のこと好き?」
「好きに決まってるじゃん」
「どれ位好き?」
「どれ位って、全身全霊で」
「そっか、ありがと」
なんだろう、もやっとした。
「急にどうしたの」
「いや、なんとなく聞きたくて」
「へんなの」
好きって言葉を伝えても、きっと彼には三分の一しか伝わっていないんだろうなと思う。
例えば君にすべての愛してるを伝えるには血管も、骨も、臓器ぜんぶに毒を盛らなければいけなくなる。
言葉はなんて不便だろう。
もし愛してる以上の言葉があるのなら、今すぐにすべてを伝えるよ。
「そうだリュウジ、手首の写メ撮らせて」
「変態」
「ありがと」
「褒めてないって」
行き止まりもゴールもない僕らの恋は、まるでひとつのコップだ。