きっと君に出会った時からずっと。














青い水槽の中を悠々と漂うエイを目で追いながら、ぼんやりと考えていた。




「もしもの話、私が魚になったらどうする?」


「…は?何だよいきなり」


さっきからどれくらい経っただろうか。

この中でもひと際大きな水槽の前で私と晴矢は立ち止まっていた、と言うより晴矢はしゃがみ込んでいかにも早く帰りたそうな顔でこちらを見上げている。

「君ならどうするかという話だ」


晴矢は昔からこういった類の場所が苦手なのだ。
ここには私が行きたいと言ったから二つ返事でも今日は許してやろう。


「ま、そん時は俺が食ってやるよ。お前食えんの俺くらいしかいねぇだろ」


こんな事を何食わぬ顔で言うものだから。


「君にしては悪くない答えだね。なら、私が水族館に捕獲されたらどうする?」


「まだあんのかよ、えっとじゃあその水族館を俺が買収する」

たまらない気持ちになってしまうじゃないか。


「へえ、有望だね。楽しみにしてるよ」


高校生になって私と晴矢はよく一緒に学校を休んだ。

特に何か問題があるとか嫌な事がある訳では無かったけれど、わざと電車を乗り過ごして二人で色んな場所へ行った。


平日の真昼間のせいかフロアには自分達の他に3、4人いるだけで他は随分閑散としている。


「じゃあ逆に、俺がそうなったらお前どうすんの」


いつもの顔だ、人を試すようなこころの中を透かすような眼。

「そうだね、私だったらまず君を家に引き取って後から魚になる」


「それ出来んの?」


「その時は魚の神と契約を交わすから可能だ」


「あ、これだけは言っとくが狭い水槽とかは勘弁な。むしろ俺は海のがいいぜ」


そうだ私はずっと


「そう言うと思ったよ。でも海は広すぎると思うけどね」


「広いから良いんじゃねぇ?自分のやりたい様に出来る」


君に出会った時から既にずっと、底の見えない水の中で溺れる無様な魚になってしまっているよ。


「間違いではないな」


君が一緒なら行ってもいい。





pool.




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chocola san.

Happy Birthday;)
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