短編 | ナノ
午後の一番眠くなる時間帯。
この時間の授業って、ある意味拷問と一緒だと思う。だって、落ちてくる目蓋を必死にこじ開けなくちゃいけなくて、何が楽しいのか分からない授業を聞いてなきゃいけないんだから。第一、この数式なんて、生きていく上では到底必要とは思えないよ。こんなの知らなくても、全く問題ないのに…。
…とまぁ、そんなことは考えてみるだけであって、別に俺は落ちてくる目蓋をこじ開けようとも、授業を聞こうとも思ってはいない。俺は、本能のままに寝るだけ。所謂、睡眠学習ってやつですよ。でも、そんな俺にも楽しみな授業はある。…いや、授業自体が楽しみなのではなくて、その時間が楽しみって言う方が正解なのかな。
窓側の一番後ろ。そこが俺の特等席であり、楽しみを作り上げている場所である。
今日も授業なんて聞かずに窓の外をじっと見つめていれば、捜していた人を見つける。
いつものように春と一緒に居て、運動の得意でない彼のペースに合わせてあげている様子を、俺はただ見つめるだけ。窓越しだし、高さ的にも会話なんてできない。俺が、一方的に悠太を見てるだけ。ただそれだけで、俺は満足なんだ。
たぶん、悠太は俺が見ていることに気付いてないんじゃないかって思う。これまでに目が合ったこともないし、話題に出されたこともない。だからっていうわけでもないけど、俺はいつ悠太がこのことに気付くかなってちょっとわくわくしてるんだ。
きっと、気付いたときの悠太は赤い顔をしながらも平静を装って、ちゃんと授業に集中してください。なんて言うんだろうな。
その姿を想像したら思わず顔がにやけて、慌てて教科書で口元を隠したのだった。

- END - 





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