お題 | ナノ

晃一くんとあきら君は仲が良い。
それは、クラスの…いや、学年中の誰もが知る事実だった。小学生の頃から一緒だという彼らは、常に行動を共にしているし、お互いを気遣う場面も多々見られる。比較的二人と仲の良い俺としては、それは羨ましく思う関係であると同時に、二人の間に立ち入ることなど、誰にもできないのだろうと諦めていた。

「こーちゃん、見て見てー!ほら!僕今回のテストこんなに頑張った!」
「頑張ったってお前、これ赤点じゃねぇか!」
「でも前回より2点も上がったもーん!」
「上がったのは偉いけど、赤点脱出しなきゃダメでしょ」

返却されたテストを自慢気に見せるあきら君と、それを見て呆れる晃一くん。これはもう日常的な光景で、遠目に見ていた俺は、彼らの会話に思わず頬を緩ませた。本当に、なんて二人は仲が良いのだろうか。あきら君は、晃一くんを困らせることが多いものの、彼のことをよく見ていて、よく気がつく。大事なときには支えになれる彼は、本当は俺なんかより、ずっと大人なのかもしれない。
晃一くんも、あきら君の言動に呆れてこそいるけれど、常にどこか楽しんでいるし、嬉しそうだ。そして、彼のためなら大抵のことはやってあげている。今だってほら、結局あきら君に押し負けて購買のパンを買ってくることになってる。
笑顔で手を降り、晃一くんを送り出すあきら君。そんな彼らを見届けてから視線を逸らそうとしたそのとき、俺は自分の目を疑った。
あきら君が、それまでの無邪気な笑顔を潜ませ、一瞬で冷めた表情になったのだ。まるで、先程までのが演技であったかのように…。
視線を外せず、あきら君を見つめ続けていると、彼は視線に気付いたのか、こちらを向いた。目が合い、動揺する俺のことをじっと見つめ、彼はふっと笑った。
ああ、俺はなに一つ分かってなかったんだ。
晃一くんの好むように自分を演じるあきら君と、そうとは知らずにあきら君に惹かれる晃一くん。彼らの歪な関係を、俺は目の当たりにしてしまったんだ。





知ってしまった本当の真実

- END - 





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