お題 | ナノ

『…次のニュースです。今月の○日、帰宅中に行方が分からなくなったとされてい――‥ブツッ』


暗い部屋の中、青白い光を放つテレビを消した。彼らは、いつまで同じニュースを流すんだろうか?目撃情報?そんなのあるわけないじゃない。

「…ほんと、人間って適当だよねー」

笑顔を向けて部屋の隅にうずくまるこーちゃんを振り返った。彼は部屋の隅でうずくまり、ぐたっとしている。
こーちゃんを監禁してから、約2週間が経った。体中にあざや傷ができ、目には生気が感じられない。最近は食事もとらなくなった。

僕という恋人がいながら、クリスマスだのバレンタインだの、事あるごとに女子生徒からのプレゼントを大量に持って帰ってくる彼にイライラが募った。嫉妬、憎悪。2週間前のこーちゃんの誕生日、やっぱり彼はプレゼントを貰って帰ってきた。しかも笑顔で。
なんで?どうして?君は僕だけのものでしょ?他の奴なんていらないでしょ?僕からのプレゼントだけじゃ満足できないの?ねぇこーちゃん、どうして?
僕の中で何かが切れ、気付いたときにはこーちゃんを殴り、手足を縛っていた。それが、君の監禁生活の始まり。

「…ねぇこーちゃん。僕のこと好きだよね?」

ぐったりするこーちゃんの前にしゃがみ込み、無理矢理目を合わさせて問い掛ける。
あぁ、なんて濁った瞳…。

「…好き、だよ…」

切れた唇から聞こえたのは、聞き逃しそうな掠れた声だった。

「ホントに?じゃあ、愛してるって言ってよ。僕を安心させて?」
「…あい、してる、よ…あき、ら。だから…」
「だから?」
「…もう、こ、ろし‥て」

頭の中が、真っ白になった。今何て言った?……違う違う違う違う違う。僕はそんなこと望んでない。
僕が混乱してる間にも、こーちゃんは言葉を続ける。

もうこんなあきらを見てるのは辛いから。前の優しくて無邪気なあきらを見ていたいから。お前がこんなふうになったのは俺のせい。だから、俺を殺して元のあきらに戻って…。

苦しそうに話すこーちゃんの言葉が、一つ一つ脳内に響いていく。無表情で「あいしてる」と「ころして」を繰り返すこーちゃん。
ああ、そっか。僕が壊したのは、今までの平和な日常とか微笑ましい恋人関係だけだと思ってた。でも、実際に壊れてたのは…


ボクの心とキミだった







壊れたコワレタ


(僕の後悔の悲鳴が)(静寂を切り裂いた)

- END - 





1/2

 
←back

×
- ナノ -