お題 | ナノ

ころん

何かを転がしたような音がした。後ろを振り向いて、音の発生源であろう兄の背中をじっと見つめてたら、やっぱり聞こえたさっきの音。何の音だろうかと少し近付いてみたら、口元がもごもごと動いているのが目に入る。

「ゆーた、何か食べてる?」
「え?…あ、うん。飴。祐希もいる?」
「うん、いる」
「じゃあ、ちょっと待ってて」

ごそごそと鞄を漁って飴の入った袋を取り出す。そして、一つのいちご味の飴をはい、と差し出してくれる。
う〜ん、俺が欲しいのはこれじゃないんだけど…。

「…これじゃない」
「え?」
「これじゃなくて、俺が欲しいのはこっち」

そう言うと同時に悠太を引き寄せ、口付ける。上手く取れなくて何度か悠太の口内で飴を転がした。それでも何とか拾い上げ、唇を離したときには、飴玉は俺の口にあった。

「〜〜っ、祐希、何するの」
「…ごちそうさまです」
「こら、人の話を聞きなさい」

真っ赤な顔して抗議する悠太は本当に可愛くて、もう一回したいなぁと思った。…まぁ、丁重にお断りされましたが。さすがにファーストキスがあれっていうのは、お兄ちゃんには刺激が強すぎたようです。

ころん

さっきまで悠太が食べてた飴を口内で転がす。だいぶ小さくなってきたけど、今までに食べたどの飴よりも甘いように感じた。






甘ったるい


(ファーストキスは)(いちご味でした)

- END - 





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