お題 | ナノ

やっと終わった職員会議。静まり返った学校の見回りは、今日は俺の当番で、諦めと少しの期待を持ちながら一つ一つ教室を見て回る。そして、目的の3年4組の教室に入ったとき、彼が既に帰ってしまったことに少しだけがっかりして、ため息をついた。今日は一緒に帰れるはずだったのになぁ…。
急に入ってしまった職員会議。彼は待ってるって言ってくれたけど、やっぱり遅くなり過ぎたみたいだ。再びため息をついて窓の鍵を確認していると、ふと目に入った彼の姿。校門のところに一人佇む黒髪の少年は、彼で間違いないだろう。

「待っててくれたんだ…!」

急いで教室を出ようとしたが、帰り際にでも誰かが落としたのであろう生徒手帳が床にぽつりと取り残されているのが見え、立ち止まる。放っておくわけにもいかず、拾い上げたとき、手帳に挟まっていたのだろうか、静かに一枚の紙が落ちた。裏返しにすれば、それが写真であることが分かった。しかもよく知る人物の。

「これは…」

思わず口元が緩みそうになる。だってこんな…、嬉しいじゃないか。
折れてしまわぬように、もう一度写真を手帳に挟み込む。早く彼の元へ行って、これを返してあげよう。これは大切なものだから。彼にとっても、俺にとっても…。






「要くん!遅れてごめんね。あとこれ、落とし物」
「あ、これ…」
「写真入ってるんだから、気を付けてね」
「…っ!見たのかよ!」









生徒手帳にはさめた写真


(常に持ち歩いていたのは)(初めて一緒に撮った写真)

ー END ー 





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