お題 | ナノ

「…はぁ」

本日何度目か分からないため息をついた。自分はこんなに弱い人間だっただろうか?あの人に会えないだけでこんな…。

「はぁ、」

見ていた、というよりは開いていただけの教科書を閉じつつ、再びため息をつく。
昨日、一昨日と俺は熱を出して学校を休んでいた。先生がお見舞いに行く、というメールをくれたけど、親にバレたらマズイし移ったら困るから、と返信をして拒否した。そして、漸く治って学校に復帰してみれば、会いたかった人は、出張で学校には居なかった。
あ〜、何で居ないんだよ。やっと会えると思って来たのに…。あのとき素直に来てほしいって言っとけば良かった。机に突っ伏して後悔したけど、それは何も生み出さなかった。ただ会いたいという気持ちが募るだけで。

「要っちー!お昼食べ行こー!」
「ん?あ、あぁ」

早くこんな一日終わって明日になればいいのに、と思いつつ席を立ったとき、ふと携帯が鳴り出す。メールかと思ってディスプレイを見た瞬間、ドキリとした。
祐希と子ザルに「悪い、先行ってくれ!」とだけ残し、廊下の陰まで走って行き、電話に出た。

「も、もしもし」
『あ、要くん?今平気?』
「はい」
『体調は大丈夫?治った?』
「はい、もう大丈夫です。…あ、あの、先生」
『ん?なに?』
「あの、えっと…、早く会いたい、です」
『…うん、俺も。寂しい?』
「ば、ばか!そんなんじゃないです!もう切ります、それじゃ」
『え、ちょ、かな…』

最後まで話を聞かずに電話を切った。だって、先生が変なこと言うから。別に寂しくなんかない。そうだ、別に寂しくなんか…

「…あー、早く会いてぇ」

ずるずるとその場に座り込みながら、俺はぽつりと呟いた。






本当は寂しい

- END - 





1/2

 
←back

×
- ナノ -