お題 | ナノ
「好きです、」
勇気を振り絞ってそう伝えたのは、たしか三ヶ月前。押し殺していた気持ちが溢れ出して、どうにもできなくなって、半ば勢いで想いを伝えた。
先生は最初驚いた顔をしたけど、直ぐに笑顔になり俺を受け入れてくれた。でも、恋人という関係にはなかなか慣れなくて、自分から話し掛けるなんて稀なこと。今日だって、せっかくのデートなのに会話らしい会話もしてないように思う。
「要くんはお昼は何が食べたいー？」
「え、あ、…何でもいいです」
答えてから後悔した。
もっと、ちゃんとした返事をすれば良かった。会話を広げられない自分に嫌気がした。好きという気持ちは大きくなる一方なのに、その気持ちが上手く表現できない…。
言葉にできないなら行動に移してみようか、なんてふと考えてみた。手を繋いでみたいなって。勇気を振り絞って手を伸ばしてみるものの、手と手が触れそうになると躊躇してしまい、手を引っ込めた。こんなに近くにいるんだから届くはずなのに、届かない…。
「…要くん？どうかした？」
「いえ、なんでも、ないです」
無理に笑ってみせれば、先生はふんわりと微笑みながら「そっか」とだけ言ってまた歩き始めた。
少し先を歩く先生の背中を見つめながら、募っていく好きの気持ちをいつかは形にしたいと思った。
手を繋いで歩きたい
- END -
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