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「要くん、ごめんね…」
「…先生のせいじゃ、ないです」

先生との関係が終わった。
理由は、校長に俺達が付き合ってることがバレたから。手を繋いで帰ってるところを誰かに見られ、それが噂で広まった。そして、噂は運悪く校長の耳にも届いてしまった。結果、先生は他の学校へ移動。本来なら先生という職を失うかもしれなかったけど、校長が他の学校へ移動という処分だけにしてくれたらしい。
危ない綱渡りだって、お互い分かってた。いつかこうなるんじゃないかって考えてもいた。
…だけど、やっぱり辛いのに変わりはない。先生は、ただひたすら「ごめんね」と謝った。先生が悪いんじゃないのに。謝るのは俺の方だ。俺が想いを伝えずにいればこんなことにならなかった。"好きです"なんて言わなければ…。でも、先生と過ごした時間を思い出すとそんなことも言えなくなる。だって、本当に幸せだったから。伝えなければよかったなんて言ってこの恋をなかったことにしたら、俺と先生の時間もなかったことになる。
だから、俺が先生に伝えるのは一言だけ。

「先生、ありがとうございました」

俺はできるだけ笑顔を心掛けてお礼を言った。俺、滅多に笑わなかったけど、今はちゃんと笑えてるだろ?
俺は、泣き顔なんか覚えていてほしくないんです。だから、先生も泣かないでください。先生も笑っていてください。
そう言ったけど、俺の視界も歪んできたあー、やっぱり無理だ。必死に笑顔を崩さないようにする俺を、先生は「最後まで無理させてごめんね。…ありがとう」と言ってきつく抱きしめてくれた。そして、耳元で一言だけポツリと呟いた。




翌日、東先生が諸事情により他の学校に移動になったと担任から告げられた。
本当に、もう先生はいないんだ…。そう思うとまた涙が零れそうになったけど、俺はそれをぐっと堪えた。昨日、俺は絶対にもう泣かないって決めたから。抱きしめられたときに囁かれた一つの約束。あの約束がある限り、俺は先生を想って泣いたりしない。

俺はあの言葉を信じるよ。




(卒業式の日に迎えに来てくれるという)(貴方の言葉を)

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