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最近俺は、気付くといつもあの人のことを考えている。何にも集中できないくらい…。
生徒会の仕事もまったく捗らず、今日も一人で居残り状態だ。全然減らない資料の山を見て、思わず大きな溜め息が出る。すると、それとほぼ同時に生徒会室の扉を開ける音が聞こえた。

「あれ、塚原くん?まだ残ってたんだ」
「…あ」

最悪だ…。今、一番会いたくない人が来てしまった。
しかも、頑張るねぇとか言いながら、俺の使ってる机の前にしゃがみ込んでくる。
前に、教室で先生に勉強を教えてもらった時みたいに…。

「…そんなに頑張ってないです」
「そう?僕には、君は頑張ってるように見えるんだけどなぁ」

そう言って笑う先生を見て、俺は思わず、してはいけない質問をしてしまった。

「…先生は、好きな人、いるんですか?」
「えっ…?」

唐突な質問に、先生は暫く固まってしまった。だけど、その後小さな声で、いるよとだけ答えてくれた。そして、僕からも質問していいかな?と聞いてきた。

「何で、急にそんなこと聞いたの?」
「それは…」

俺は答えに詰まった。言ってしまえば、自分の気持ちを認めることになる。だけど、それでも抑えられないくらい俺は、先生が好きだ。でも俺は、気持ちを素直に言うなんてことは絶対にできない。だって、言ったら先生とは話すらできなくなるかもしれないから。
もう、俺はどうしたらいいか…

「…分からないんです」
「え?何が?」
「…気付くといつもあんたのこと考えてて、授業にも生徒会の仕事にも集中できない。もう俺、どうしたらいいか分からないんです!」

俺は一気に吐き捨てるように言った。
先生は驚いたように俺を見ている。…もう、この場から直ぐにいなくなりたい。まともに先生の顔を見ているのが辛くなり、視線を逸らそうとした瞬間、先生に頭を撫でられた。

「…塚原くん、ズルいなぁ」
「……は?」
「言うときは僕から言おうと思ってたのに、先に言っちゃうんだもん」
「………」

…え?それって…。
戸惑う俺のことを気にせず、先生は、ねぇ、さっきどうしたらいいか分からないって言ってたよね?とか聞いてくる。一体先生が何を考えているのか分からぬまま俺は、言いましたけど…?と答えた。
すると先生は、それじゃあさ、僕がアドバイスをしてあげるよ、なんて言ってくる。俺は意味が分からず、ただ先生の言葉を繰り返した。

「アド、バイス?」
「うん。…あのね、自分の気持ちに素直になって、僕と付き合えばいいんじゃないかなって思うんだ」
「〜〜〜っ」
「僕は、塚原くんと付き合いたいな」

先生はニコニコしながら、ねっ?と同意を求めてくる。この笑顔は、反則だと思う。
…くそっ!俺は、明日からも当分は何にも集中できなさそうだ…。




(ねぇ、塚原くんも僕が好きなんだよね?)(…今更ですね)
 
- END - 





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