log | ナノ
9月下旬、穂稀高校では文化祭の準備が進んでいた。
僕達のクラスでは今年、喫茶店をやることになっている。僕としては、遊ぶかんじの方が良かったんだけどね。でもまぁ、茶菓子くらいは食べれそうだから良しとしよう。ほら、あっちでは女子が当日に出すケーキを誰が作るか決めてるし!……あっ、言っておくけど、僕だって別にサボってるわけじゃないよ。少し前から見当たらないこーちゃんを捜すっていう大事な仕事をしてるんだから!一向に捗らない仕事だけどね。
それにしても、こーちゃんは仕事をサボってどこで遊んでんだろ。暫く被服室や教員室などのこーちゃんがいそうな所を捜したけど、全然見付からない。もう疲れたなぁ。…あ、もしかしたらもう教室に戻ってるのかなぁ。そんなことを考えながら教室に向かって廊下を歩いてる途中、多目的教室の方から「ぎゃぁぁぁぁぁ!」って悲鳴が聞こえた。まったく、誰?あんなはしたない悲鳴あげてんの。
悲鳴をあげた人物を確認するべく教室の扉を開くとそこには、とんでもない格好をしたこーちゃんがいた。
 


「……こーちゃん、そんな素敵な趣味があったの?」

今、目の前にいるのはクラスの女子6人に囲まれて、ロングヘアーのかつらにメイド服という格好のこーちゃん。素直に「似合ってるねぇ」と感想を言えば、こーちゃんは顔を真っ赤にして「似合ってなんかないよ!こんなの俺の趣味じゃないし!!」と抗議をする。そんな抗議されたって、僕は本当のことを言ってるだけだもん。僕はもう一度、こーちゃんを見た感想を素直に言ってみた。

「え〜、似合ってるよぉ。それに、趣味じゃないなら何でそんな服着てんの?」
「これは、女子が勝手に…」
「…はい?」
「可愛いでしょ?これ、晃一君の文化祭の衣装なの」

僕が理解できないでいると、こーちゃんを囲んでいた女子のうちの一人が説明してくれた。どうやら、嫌がるこーちゃんを無理やり着替えさせたらしい。いくら男でも、この人数の女子相手じゃ抵抗しても意味がなかったんだろうな。色んなことを考えながらこーちゃんをじーっと見てた僕に、女子達は意見を求めてきた。

「ねぇ、あきら君はどう思う?晃一君は、この衣装でいいと思うよね?」
「う〜ん…似合うけど、こーちゃんもウェイターでいいと思うよ」
「え〜」
「メイドさんは、女の子だけで充分でしょ」

明らかに不服そうな彼女達を部屋から押し出し、「今からこーちゃんは着替えるんだから、覗いちゃダメだよ!」って念をおして扉を閉めた。ハァとため息をついてこーちゃんの近くまで戻ると、彼はやんわりと笑って僕にお礼を言った。

「あきら…ありがとな」
「ん?何が?」
「あきらが反対してくれなかったら、俺はこれを着ることになってたからさ」

メイド服を脱ぎながら、もう一度「ありがとな」とか言い出すこーちゃん。あらら、なんか勘違いしちゃってる?ちゃんと説明しなきゃダメみたいだね。

「あ〜、別にこーちゃんのためじゃないよ」
「えっ?」
「こーちゃんは、僕だけのメイドさんじゃなきゃね」
「…は?」
「それを持ち帰って、家でまた着てもらうからね。それで、僕のお世話をしてちょーだい。メ・イ・ド・さん」
「…嫌だ!絶対に嫌だぁぁ!!」






―――その日の夜、メイド服もこーちゃんもしっかりお持ち帰りした僕は、今までにないくらい素晴らしい時間を過ごしたのです。


メイド服万歳!!

- END - 





1/2

 
←back

×
- ナノ -