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今日の天気、晴れ
今日の俺の気分…雨



空がこんなに晴れてる日曜日。
本当なら気分も清々しくて良い日曜日なはずだけど、俺の気分は憂鬱だった。原因は、俺の実の兄であり、想い人でもある悠太。今日も一人で本なんか読んで過ごしてる。あー、構ってほしいなぁ、とか思って、髪の毛を撫でてみた。そうすると悠太は驚いたようにピクッと反応をして、立っている俺を見上げる。

「…ビックリした。何?」
「んー?…何でもない」
「そう?」

不思議そうな顔をしながら、悠太は再び視線を本に戻した。俺の気持ちには、まったく気付かない悠太。『双子は通じ合ってる』とかどこかで聞いた気がするけど、そんなの絶対嘘だ。全然以心伝心してないじゃん…。
そんなことを思いながら悠太の背中を見てたら、胸がきゅうっと締め付けられるように痛んだ。ねぇ、気付いて。俺は、悠太が好きなんだよ?いくら言ったって足りないくらい。

好き、好き、好き…

「…大好き」
「えっ…?」

俺は無意識のうちに後ろから悠太を抱き締めて、思っていた言葉を口に出していた。悠太はさっきと同じように、少し目を見開いて俺を見上げてる。

「祐希?」

悠太は、いつものように優しく俺の名を呼んだ。
あー、もう。好きって言っちゃったのに、何でそんなふうに声掛けるかな。あ、聞こえてなかったとか?
俺は、ここまできたのなら、と自分の気持ちに蓋をすることを諦めた。今度は自分から声を掛け、想いを伝える。

「…悠太」
「何?」
「俺さ、悠太が…」
「うん」
「…悠太が、大好きだよ」

俯きながらだけど、必死に伝えた俺の想い。悠太は、どんな返事をくれる?反応を確認しようと顔を上げると、そこにはいつもと変わらぬ悠太の顔があるだけだった。
……終わった。悠太の顔を見てそう直感した。真っ直ぐ見つめてくる悠太の視線が、とても痛い。その目を見ながらショックを受けると同時に、俺は次にどうするべきか考えていた。今までの関係が壊れないようにするにはどうしたらいいか。あまり使い物にならない思考を無理矢理使い、一つの答えを導いた。
…そうだ。悠太には今のことを忘れてもらおう
告白をなかったことにしよう。そう思ったときには、もう俺は言葉にしていた。

「あ、今の、忘れて…」
「…祐希」
「…何ですか?」
「何で忘れてなんて言うの?」
「…いいから、忘れて」
「…返事、聞かなくていいの?」
「…いい。分かってる、から」

それだけ言って、俺は悠太に背を向けた。
だって、泣きそうなんだもん。

伝えたけど届かなかった想い。
結ばれることのない、大好きな兄と弟の俺。

考えれば考えるほど辛くなり、視界が歪んだ。
…やだ。泣きたくない。

「…祐希」

必死で涙をこらえる俺を呼ぶ声が聞こえた。
何で悠太は俺を呼ぶの?俺は今、失恋で傷心中なんだから、そっとしておいてよ…。
無視をして黙ったままでいると、悠太は前に回り込み、俺の顔を上に向かせた。そして、微かにだが確実に、唇になにかが触れた。…いや、なにかじゃない。あれは、悠太の唇が重ねられた感触で、それはつまり…。何が起こったのか、分からなかった。頭が混乱でおかしくなりそうだ。

「…ゆ、た?今、何した?」
「何って…キス、ですけど」
「な、何で?」
「えっ?したかったからだけど…嫌だった?」
「嫌じゃ、ないよ。でも、したかったってどういう…?」
「だって、祐希も俺が好きなんでしょ?だから、恋人になった記念にしたかったんだけど、何か問題あった?」

悠太の言葉を聞いた俺の頭は、使い物にならなかった。
…え?恋人?記念?悠太、何言ってんの?訳が分かんなくなってきた俺は、取り敢えず悠太に疑問をぶつけてみる。

「恋人って、俺達が?」
「…どう考えてもそうでしょ。それ以外に誰かいます?」
「…うそ」
「分かってるって言ったのに、全然分かってないんじゃん。俺は祐希が好きなんだよ?」

そう言うと悠太は、俺を抱き締めてくれた。
あぁ、最初からちゃんと気持ち聞いとけばよかったなぁ。そんなことを思いながら、悠太をぎゅうっと抱き締め返して幸せを感じた。
やっぱり、今日は良い日曜日だったんだ。





今日の天気、晴れ
今日の俺の気分、雨のち快晴


- END - 





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