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天気は晴れ。ポカポカと暖かい陽射しの下で、俺達は昼食をとっていた。空を見上げれば、とても綺麗な青が広がっていて、屋上で食べるのも悪くないなと思う。そんなことを考えながら、食事を再開しようと止めていた箸を弁当に延ばしたとき、違和感を感じた。
…今日の弁当にアスパラガスなんて入ってたっけ?いや、入ってなかっただろ。じゃあ、何で入ってんだ?他の具に隠れてただけか?一人頭の中でぐるぐると自問自答を繰り返していると、視界の端にレタスを挟んだ箸が現れた。そして、その箸は俺の弁当箱にレタスを落としていく。この箸の主など、確認しなくたって分かる。だって、今ここには俺達二人しかいないんだから。

「…あきら、何してんだ?」
「え?何が?」
「レ・タ・ス!今俺のとこに入れたよな?ついでにアスパラガスも!」
「ちょっと何?こーちゃん、自分の弁当の中身まで分からなくなっちゃったの?」
「いや、入れるとこ見たから」
「幻覚?病院行った方がいいんじゃない?」
「…もういいよ」
「えっ、ホントに!?じゃあ、残りのアスパラガスとこのブロッコリーも食べてよ!」
「やっぱりお前じゃねぇか!」

俺の話など聞かずに、ポイポイと俺の弁当箱に野菜を放り込むあきら。更には、俺の弁当に入ってた唐揚げを「交換ね〜」とか言って取っていく。
…誰か、こいつを止めてください

「それ交換じゃないから!ったく、ダメだろ?ちゃんと野菜も食べなきゃ」
「えー、無理だよー。だって僕、野菜アレルギーだもん」
「嘘つかないの!ほら、ウインナーもやるから、それと一緒に食えよ」
「や!野菜嫌い!」

そう言って、あきらはプイッとそっぽを向いてしまった。それどころか、もう弁当箱を仕舞い始め、一切野菜を受け付けません状態。

「なぁ、あきら。野菜も食べないと体に良くないし、背も伸びないぞ?」

なんとかして野菜を食べさせようとした俺の言葉にピクリと反応したかと思ったら、次の瞬間には両頬を思いっ切り抓られた。

「い、いひゃいよ、あひら!」
「こーちゃん、僕が身長のこと気にしてること知ってんのに、小さいって言った!」
「いっひぇらい!ひいはいなんれ、いっひぇらい!」
「あっ、また小さいって言ったー!こーちゃんのバカー!!」

抓る指に更に力を込めて横に引っ張るあきらとそれを引きはがそうと必死になる俺。空を見上げてたときのような、あのゆったりした時間はどこへやら…。







(あ、チャイム鳴った!こーちゃん、バイバイ)(ちょっ、かたすまで待てよ!)

- END - 





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