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※死ネタ




あのね、こーちゃん
僕、こーちゃんが…



最近ずっと見ている同じ夢。
場所は分からない。ただ、暗闇にあきらがポツンと一人で背を向けて立っているんだ。そして、俺が「あきら?」と声を掛けるとあきらはゆっくり振り向いて微笑み、でも涙を流しながらこう言うのだ。


あのね、こーちゃん
僕、こーちゃんが…


もう何度も見ているのに、いつもこの言葉の続きが聞き取れない。そこだけ無音になる。そして、俺が聞き返そうとするとあきらは闇に溶け込むようにして消えてしまうのだ。
…これは単なる夢。最初はそう思っていたけど、今はそれが不幸の始まりを予言していたものだと分かった。



突然のことだった。学校に向かう途中であきらが倒れたのは。急いで病院に運ばれ、検査をした結果分かったのは、かなり深刻な病気だということ。そして、医師は言っていた。

「もう、手遅れです」と…。

そしてその言葉通り、あきらは一時的に目は覚ましたものの成す術もなく、病院に運ばれて3日目の朝にこの世を去った。
そして、俺があの夢を見ることもなくなった。
 
「…っ、あきら」

俺はあきらがいなくなって、部屋に籠るようになった。涙が枯れることなく流れ続ける。
もういっそのこと、俺もあきらの元へ逝ってしまおうか…?そんな考えがふと頭を過り、特に何を感じるでもなくカッターを手にする。これを使えば、俺もあきらの元へ逝ける…。そう思って刃を出し始めた瞬間、チャイムが鳴った。居留守をつかうこともできたけど、なんとなく出なきゃいけない気がした。扉を開ければ、立っていたのはあきらのお母さんで、一通の手紙を差し出された。そして「あきらが晃一くんに書いてたみたい。病室のベッドの敷き布団とシーツの間に挟んであったの」と言われた。俺は小さく「ありがとうございます」とだけ言って自分の部屋に戻り、封筒を見ると、細く弱々しい字で"こーちゃんへ"と書いてあった。封筒を開け、中身を見てみる。あきらからの最期の言葉…





こーちゃんへ
心配掛けちゃってごめんね。でもね、直感なんだけど僕はもう長くないと思うんだ。だから、今までずっと言えなかったことを後悔しないように言わせて。

あのね、こーちゃん
僕、こーちゃんが大好き。

恋愛対象として。こんなこと言ったらこーちゃんは困るだろうけど、どうしても伝えたかった。最期まで困らせるようなこと言ってごめんね。…僕がいなくなっても、こーちゃんには笑っててほしいな。僕は、笑顔のこーちゃんが大好きだから…。さようなら。そして、ありがとう。…だいすき
あきらより

 




…視界が歪んだ。零れ落ちた涙で手紙の文字が滲んでいく。
ずっと気になっていた夢での言葉の続きが、この手紙に書いてあった。"大好き"って言葉が。

「…っ、あき、ら」

伝えられなかったのは、俺も一緒だ。俺だって、あきらが大好きだから。でも、勝手に叶わない恋って決め付けて、心の中で押し殺してた。
どんなに伝えたくても、どんなに後悔しても、もうあきらに直接言ってやることなんかできない。

「…あきら、俺も。俺も大好きだよ」

もう直接は言えないけれど、せめてこの手紙を通して俺の想いが届いてほしい。



愛する、貴方へ


(明日からはちゃんと笑って生きるから)(天国にいる大好きな人に)(愛の言葉を届けて下さい)

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