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「ポッキー、食べますか?」

昼を食べ終わったのを見計らって、春が鞄からポッキーを取り出して言った。それを見ながら、あー、そういえば今日はポッキーの日だったか、なんて思い出す。ポッキーの日だろうがなんだろうが、いつでもポッキーは食べれるのに、何でわざわざこんな日があるのか俺には理解できない。何でなんだろ?
そんなどうでもいいことを考えながら、ポッキーを一本食べた。

パキッ

ん〜、俺にはやっぱり理解できないなぁ。ポッキーの日、ポッキーの日……あ。何度も同じ言葉を頭の中で繰り返していると、ある一つの考えが浮かんだ。うん、たぶんこれが正解。

「かーなーめ」
「あ?なん…むぐっ!?」

正解が分かったなら、実践といきますか。
そう思って、要の口に一本のポッキーを突っ込んだ。逃がさないように要の後頭部に手を当て、一方通行なポッキーゲームの開始。離せとでも言うように胸元を叩かれたけど、そんなことは気にしない。端で見てる悠太たちも気にしない。2回くらい齧ってしまえば、行き着くのは要の唇。しっかりとキスをした後で解放してやると、要は顔を真っ赤にしてわなわなと震えていた。

「〜〜っの、ばか祐希!」
「やだな〜。ポッキーの日に忠実に従ったまでじゃん」
「はぁ!?意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ!」

要は怒って一人、教室へと戻ってしまう。
もー、なんであんな怒りっぽいのかな、俺の彼女は。呆然としている春と千鶴を悠太に任せて要の後を追う。そして、直ぐに要を見付けて後ろから抱き着いた。その衝撃でよろけた要は、また俺に文句を言い出す。本当に照れ屋さんで困ったものだ。

「離れろ!誰かに見られたらどうすんだよ!だいたいお前は「要」」

要の言葉を遮るように名前を呼ぶ。彼は機嫌が悪そうに何だよ?と横目で見上げながら聞いてくる。そんな彼に、特別サービスで笑顔を向け、一言だけ言ってやる。

「要、大好き」

お互い滅多に言わない言葉を口にすれば、要はさっきよりも顔を赤くして押し黙ってしまった。けれど、言葉なんていらない。
俺が前に回している手を、要はそっと握ってくれたから。






(ポッキーなんて)(キスするための口実)

- END - 





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