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「春ちゃんっ、ありがとね」
「いいえー、またいつでも聞きに来てください」

パタパタと帰っていく茉咲を笑顔で見送る春。いつものように、数学を教えていたのだ。でも、教えてるとは言っても、春だって最初から数学が得意だったわけじゃない。俺が教えてあげたんだ。テストの点数があがったって喜んでくれるのが嬉しくて、自分の勉強時間が削れるなんて気にもしなかった。でも、最近思うんだ。春が今でも数学が分からなければよかったのにって。少なくとも、人に教えられるレベルでなければよかったのにって…。どう見たって茉咲は春が好きで、それが理由で春に勉強を教えてもらってる。そんな茉咲に嫉妬してるんだ。そりゃあ、数学がダメだったら他の教科を聞きに来るかもしれないけど。そう思うと、俺はもっと嫌な奴になる。全教科できなければいいのにって思うから。
…でも、やっぱりできるようになってほしいとも思う。分かりました!ありがとうございます!って言うときの笑顔は最高に可愛いから。

「…ねぇ、春。帰ったら英語教えよっか?」
「え、いいんですか?ありがとうございます!」

そう言って柔らかく笑う君。きっと今日も勉強を教えたら、また最高の笑顔を見せてくれるんだ。
その笑顔を見るために、醜い心は仕舞っておこう。

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