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「うぁー、寒い。凍えそう」
「ねー。雪でも降るのかな?」

北風の吹きすさぶ帰り道。テスト前ということで少し残って勉強をしていたら(大半がお喋りの人もいたけど)、すっかり日が暮れていた。
コートを着てマフラーを巻いていてもまだ寒くて、寒風に思わず身震いした。
あー、やっぱり手袋もしてくればよかったと思いつつ、息によって温めていた手を下ろし、悠太の手を握る。ほら、寒いときって人肌が恋しくなるじゃないですか。

「…悠太の手、あったかいね」
「え?そう?」
「うん。なんか、悠太の手っていつもあったかい気がする」

思い返してみれば、寒いことを口実に悠太と手を繋ぐことはこの冬だけでも何度もあったけど、いつだってその手は温かかったように思う。逆にすぐ手が冷える俺は、いつの間にか寒くなると悠太の手を握る癖がついたんだ。あ。ってことは…

「…手の冷たい人は心が温かいってやつ、嘘なんだね」
「え?」
「ほら、何でか分かんないけどよく言うじゃん」
「あー、うん。でも、何で嘘だと思うの?」
「だって、悠太の手、あったかいんだもん。悠太は心があったかいのに」

悠太は誰にでも優しくて、いつも周りを気にしてて、気が利いて…。絶対に心のあったかい人だもん。まったく、適当なこと言う人がいるもんだよ。手の温かい何人の人が迷惑してることか。うちの優しいお兄ちゃんに謝ってもらいたいもんだ。
悠太の手を強く握りながら心の中で一人、そんな文句を呟いた。





(そういえば、春の手もあったかいよね)(…悠太は春と手繋いだことあるんだ)(…あ)

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