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「…あ、雨」
「ホントだ」

天気予報が外れた。
朝からどんよりした曇り空だったけど、今日は雨は降らないでしょうってお天気のお姉さんが言ってたんだ。だから、あー、傘は要らないなぁとか思って家を出たのに。失敗した…。
少し止むのを待ってから帰らなきゃと思っていたら、ばんっという音が隣から聞こえた。

「…悠太、傘持ってきてたの?」
「うん、雨降りそうな空だったから。祐希は持ってきてないの?」
「うん」
「じゃ、一緒に入ろ」

差し出してくれた傘に入り、身を寄せ合って歩いた。さすがに男子高校生2人ではきついけど、入れてもらってる以上文句は言えない。そのまま暫く歩いて、学校と家の中間辺りまできたところで、ふとおかしいなと思った。少しくらい濡れてもいいはずなのに、まったく冷たさを感じない。はっとして隣を見れば、案の定悠太の左半身がびしょ濡れになっていた。

「悠太、俺の方に傘傾けなくていいよ。びしょ濡れじゃん」
「いいの。祐希が風邪引いたら大変でしょ」
「俺は風邪引かないから大丈夫。それに、これじゃ悠太が風邪引いちゃうじゃん」
「んー、風邪引いたら祐希に看病してもらうから平気」

何を言っても、悠太は絶対俺の方に傾けた傘を直さない。まったく、ホントに優し過ぎるお兄ちゃんなんだから…。俺は小さくため息をついてから、「ちょっと待って」と声を掛け、カーディガンを脱いだ。そして、それを悠太に掛けてやる。

「風邪引かれたら困るから、せめてそれ着てて」
「…うん、ありがとう」

どちらからでもなく手を繋ぎ、再び家へと歩を進める。歩き始めて間もなく濡れていくのは、俺のベージュのカーディガン。雨は依然として勢いよく降り続け、俺達の体温を奪っていく。そんな中、家に着いたら真っ先に悠太の冷えきった身体を温めてあげようと考える。
温まるまでぎゅっと抱きしめよう、と…




(…祐希、ごめん。風邪引いた)(‥だから言ったじゃないですか)

- END - 





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